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職人と悉皆屋Column

【摺り疋田】御誂4-4 付下げ(白地 梅散らし)

白地、梅散らしの付下げです。挿し友禅の次は摺り疋田(すりびった)の染めをします。

 

摺り疋田とは、絞り染めを模した型染めの手法です。江戸時代に奢侈禁止令により総鹿の子絞りが禁止となって、型染めで比較的簡単に絞りのような柄を染め出せる摺り疋田は一段と発展しました。その歴史は現代にまで続いていて、絞りの代用というよりも、摺り疋田そのものの面白さや表現が好まれています。

そんな摺り疋田ですが、普及品向けの染めと上物向けの染めがあります。そして上物の摺り疋田をやる職人さんも例外なくごくわずか。さらに二十八のお願いしている摺り疋田職人さんは“摺り疋田だけ”しかやっていません。それも手彫の型紙を用いて、他の型染めは一切やらないという徹底ぶりです。手彫の型紙を用いる場合、摺り疋田の柄を表現するためには最低でも2枚の型紙が必要で、表現によっては3枚、4枚と用います。上物の摺り疋田であればとても柔らかく、深みのある摺り疋田に仕上がります。今回の摺り疋田は3枚型です。

ちなみに普及品向けの摺り疋田はシルクスクリーンのようなもので、紗摺りと呼ばれます。型枠一枚で染められますが、紗の跡が染め上がりに残ります。

 

今回は、絞り染めを完成させてから、その仕上がり具合に合わせて型を選びます。写真に写っている白黒は型見本、赤いのは絞りの生地です。

 

一番表現として近かったのが写真にある2枚の型ですが、結論としては1枚めの型を採用しています。まず摺り疋田の大きさが、絞りの粒の大きさに近い、もしくはやや小さい事が望ましいです。2枚めの写真の摺り疋田は粒に粗密があって商品によっては面白みは出ますが、今回の仕上がりを考えるとやはり1枚めの端正な感じがする摺り疋田をに軍配が上がります。また二十八の好みとしても1枚目の摺り疋田です。

 

また二十八がいつもお願いしている北本染芸の北本さんは、非常に丁寧に仕事をしてくれまして、今回も色を4色作って試し染めをしてくれました。この中で一番朱色に近い色を選んで進めてもらいます。

 

実際のお誂え品に染めて頂いた様子がこちら。とても可愛らしい梅に仕上がっています。右側の白抜きの梅には、この後、絞りの生地を刺繍で縫い付けます。

 

 

 

摺るための刷毛は鹿毛を束ねた刷毛です。こちらもご多分にもれず、刷毛を作る職人さんがいなくなっている事が染め職人さん達の悩んでいるところです。

さらに摺り疋田で黒や墨色を染める場合は、これらの中でも使い込んだ刷毛でないと染めが上手くできないそうです。使い込むことで鹿毛が磨り減る結果なのですが、この鹿毛は一本一本の中が空洞になっているためおそらくその関係で黒や墨色の刷毛への吸い込みが良いのだろうとの事。しかも磨り減らすために、紙やすりの上などでわざとやってもダメで、きちんと長年型染めの用に供した刷毛である必要があるのです。やはり昔ながらの伝統工芸には、経験に基づくノウハウが満載ですね。

 

摺り疋田はモミの木の一枚板の上で染められます。モミの木には節が少ないため、昔から利用されているのです。天井にたくさんの板が乗っかっていますが、型染め職人さん達はこの6〜7メートルある板を一日に何十回も上げ下ろしをする重労働をしてくれているのです。大体一反の着物は13メートルほどありますので、一枚板の裏表に生地を貼り付けます。そうすると必然的に折り返し部分は型染めができないので、無地となりまして、この部分を「剣先」と呼びます。

 

最後の写真は何かと言うと、先ほどの一枚板を部屋から外に突き出した様子です。職人さんがデモンストレーションでやってくださったのですが、実際やる時には生地を染めて、貼り付けたままの状態で写真のように外に出します。これは乾かす事を目的としています。洗濯物と一緒で、室内干しよりは外で干した方が乾きも良いです。当然、晴れの日に限ります。

 

 

摺り疋田職人さんに、「同じように摺り疋田しか染めない職人さんは、他にもいらっしゃるのですか?」と伺うと

「あ〜、そう言えば他には“いない”かも知れないねぇ」とのこと。まだまだお若い職人さんなので、これからも何卒宜しくお願いしたいです!

 

こちらの摺り疋田職人さん、【染め体験】も受けてくださいますので、ご希望の方は是非お尋ねになってみてください。コースは1.金封袱紗(税込 ¥4,800)、2.数寄屋袋(税込 ¥8,000)です。ご希望によって本金による名入れ(税込 ¥1,000)二十八のブログを見てということでお話くださればさらにお喜びくださると思います。

 

 (有)北本染芸  

 北本益弘さん 

 お問い合わせはお気軽にお電話で!:075-841-7303 

 京都府京都市中京区御池通大宮西入門前町539番地の5 (https://goo.gl/maps/zwpvAYotW1S2) 

(神泉苑南側入り口の二つ西隣の京町家がお仕事場です。)

 http://kitamotosengei.com/ 

 

 

《マユツバ豆知識》

1.疋田と匹田

語源を色々と調べてみましたが、諸説あって現時点で私が断定するまでには到りませんでしたので、そんな話もあるのだなというぐらいでお読みください。

疋田と匹田、どちらも「ひった」と読みますが、着物の「ひった」についてはどちらを使えば良いかということに関して定説はありません。どちらでも宜しいとなっているため、一般的な呉服屋としては自分に馴染みがある方を使っていると言えるでしょう。染織研究者の方はきっとポリシーを持って使っておられるかも知れません。

二十八としては北本さんとお話した結果、「疋」を採用しました。

北本さんが、染織の権威、切畑健先生(Wikipedia)に質問をされたそうで、その結論が「疋でも匹でもどちらでも構いません。」とのことだったそう。切畑先生からはそれぞれ語源のご説明から始まったそうです。

「疋」は人が座っている様子を横から見た様子、もしくは足の様子が象形文字になったもの。「匹」は馬の横顔であるとか、尻から尾にかけての様子が象形文字になったものとのことだそうです。

疋には「並ぶ」という意味があるそうで、田んぼで稲刈りした後の様子は点がずらっと並んでいて、それは確かに染め疋田によく似ています。

片や匹について言えば、疋田染めはよく「鹿の子」という言い方も致します。いわゆる「バンビの背中の模様」に染め疋田や絞り技法による本疋田、疋田鹿の子などがよく似ているために鹿の子と言われるのですが、その意味で言えば「匹」という文字も動物を数える漢字として「ひった」にふさわしい文字と言えるでしょう。さらには昔、摺り疋田を染めていた一枚型は間に馬の尻尾を使っていたため、それはバビズリ(馬尾摺り)とも呼ばれていたそうです。

切畑先生がどちらでも良いと仰っているので、確かにどちらでも良いのですが、呉服屋として日常的に仕事で使う文字は何か理屈をつけて統一しておきたいもの。匹という文字も鹿の子、バビズリなど説得力は高いのですが、二十八としては「疋」を採用することにしました。理由は「田」の字です。「た」には諸説なく「田」が採用されているので、田んぼの様子からやはり疋田染めが名付けられたのかと推察します。そうなると「疋」の文字の方が相性が良いのかなと考えるため今後も「疋田」と表記したいと思います。

「いや、田んぼにバンビが来るんだ!!」という方は「匹田」を用いられたら宜しいでしょう。(^_^)

そんなわけで、調べてもみましたが諸説あり、そこまで確たる学術的保証は出来兼ねますので、マユツバ的な知識としてご笑納ください。

 

 

最後に。

「この技術はもうできる職人がいない」とか、「もう少しするとこの商品は作れなくなる」、「こういう品物は貴重です」といった巷によくある口上を二十八は好みません。もちろん事実として、今後なくなってしまいそうな品物、技術があるという情報は皆様にお伝えしますが、それが売り口上であっては絶対にいけないと思っているのが二十八なのです。なぜならば職人さんが後継者を作れる環境を用意する事が二十八の大きな設立目的だから。日本の伝統的衣服を支えてきた技術、精神が途絶えそうである現代の危機において、それを継続させるために仕事をする。二十八はそこに大いなるロマンと仕事へのやり甲斐を強烈に感じます。

「職人さんが頑張っているから買ってください」というのは間違っていて、それらの素晴らしい技術を問屋、悉皆屋がディレクションする事により、着物好きの皆さんが「どうしても欲しい!!」という着物や帯をお届けする事こそ本来のあるべき姿です。“卓越した技術”は商品の表面上はわからず、そっと忍び込ませているのが一番だと考えます。そしてその“なんだか分からないけど素敵”という魅力を感じ取ってくださるお客様が二十八にはいらっしゃるので、そうしたモットーで品物を作っています!

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この記事を書いた人
原 巨樹 (はら なおき)

京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。

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