着物ビギナーさん必見!【和服の基本7種類】をプロが徹底解説!
「和服」といっても種類がたくさんあって分かりにくい…!と悩む方は多いようです。和服にはどのような種類があるのでしょうか。
今回は着物初心者の方にお伝えしたい和服の基本7種類を、それぞれの特徴やシーン別の着こなし方法、小物合わせのコツまで解説します。
「これから和装デビューしたい」「フォーマルな場に着物を着て行きたい!」と考えている方はぜひ参考にしてください。
「着物」と「和服」は何が違うの?
そもそも「着物と和服」、似た言葉に思えますが、何が違うのでしょうか?
結論をお伝えするならば「着物」と「和服」は、“ほぼ同じ意味で”お使いになって構いません。
私の周りの呉服業を営む人間は、慣習的にあまり和服とは言わないように思いますが、個人差もあります。
【着物の意味】
「着物」は本来「着る物」であり、つまりは衣類全般を指す言葉でした。室町時代の末期には「着る物」と「着物」が併用されていたようです。鎖国が解消されて海外文化が取り入れられるまでは日本の伝統的衣装としての着物以外に衣類はなかったので、衣服全てを着物と呼んでいました。その流れで近年、広義では和服全般を指して着物と呼びます。また狭義では「長着=長襦袢の上に着る1アイテムとしての着物」を指して着物とも呼んでいます。
【和服の意味】
明治時代、海外から伝わった「洋服(西洋服)」に、対義語として生まれたのが「和服」。「広義の着物」と同じものを意味する言葉ですが、和服と呼ぶ時には常に「洋服が存在していることが前提」となります。そこがもっとも大きな違いです。
どちらを使っても間違いではないので、使いやすい方を使えばOKです。
「着物」と「和服」はよく似た言葉ですが、こんなことでもちょっと立ち止まって考えると、着物の世界には歴史を感じます。
知っておきたい和服の基本7種類
和服を知るには、まずは和服の種類を知ることから、スタートしましょう。
和服はかたち・色・柄・製法などによって、さまざまな種類に分けられます。「振袖」や「留袖」といった言葉をご存知の方も多いのではないでしょうか。
まずは和服初心者の方に知っていただきたい「基本の和服7種類」から確認していきましょう。耳にする頻度も高いので、知っておくと役立ちます。
種類1.花嫁が着る「打掛(うちかけ)」
花嫁が白無垢や色打掛という和装で登場する際に着用しているのが「打掛」です。発祥は室町時代とされており、裕福な武家の女性が小袖という名の着物に羽織りました。江戸時代後期に裕福な町人も婚礼に着用するようになり、そこから現代の婚礼衣装に続いていると言えるでしょう。
花嫁衣裳としてやはり白色は特別で、白い打掛をまとう白無垢は最上級の装いです。色打掛も白無垢に準ずる婚礼衣装とされます。色打掛は打掛を鮮やかに配色しており、華やかで豪華な印象を与えます。お祝いの場で着用されることから、打掛には鶴や鳳凰などの縁起物が描かれていることが多いのです。
種類2.最上級の格式「留袖(とめそで)」
既婚女性が着用する和服のなかで、最も格式高いのが「留袖」です。これまでに結婚式に参列した経験がある方は、新郎新婦のお母様やご親族が着用しているのを見たことがあるのではないでしょうか。留袖の上半身には染め抜きの五つ紋だけが施され、裾まわりに豪華な模様が描かれているのが決まりです。結婚式では第一礼装として着用し、ゲストをお迎えします。
地色が黒だと黒留袖、それ以外の色の場合は色留袖と呼びます。黒留袖が最上級ですが、色留袖も五つ紋を入れると同格になります。ただし、新郎新婦の母親は基本的に黒留袖を着ますし、叙勲などで皇居に行く際には、喪の色である黒を避けて色留袖を着用するなどの慣習的使い分けがあります。
留袖は若向きや年配むきなどが概ね分かれているので、そのあたりも少し気にしながら選びましょう。
種類3.成人式で着る「振袖(ふりそで)」
「振袖」は未婚女性にとって最も格式高い着物。振袖は袖の長さによって「本振袖」「中振袖」「小振袖」に分けられますが、現代で一般的に着用されるのは本振袖です。中振袖は少し袖丈が短いですけれども、格が劣るわけではないので成人式に出ても大丈夫ですし、花嫁以外でしたら結婚式に参列しても構いません。
振袖は華やかな配色と大ぶりな模様が特徴であり、若い時代にしか着られない着物ですから、然るべき時期にしっかりと楽しんでください。
種類4.準礼装・盛装として使える「訪問着」
「訪問着」は留袖に比べると非常に出番が多いフォーマルな着物。訪問着は留袖・色留袖に次いで格式が高い和服であり、絵羽(えば)模様といい、着物全体がキャンパスのように染められているのが特徴です。「色留袖と似ているので見分けがつかない…」という場合は、胸元に柄が入っている場合は訪問着であると判断してOKです。
訪問着は紋をつけることによって準礼装として礼を尽くせますし、近年は紋を付けないことで気負わずに着るシーンも増えてきました。模様もさまざまなので、帯合わせによってガラリと印象が変わり、とても楽しめる着物です。
種類5.帯次第で格が変わる「付け下げ(つけさげ)」
「付け下げ」は訪問着を控えめにした着物と言えるでしょう。購入時点では反物状態で販売され、基本的に訪問着ほど豪華な柄は付いていません。、
ご友人とのお食事会から子供の入学・卒業式など、シーンを選ばず着用できるのが嬉しいポイントです。
ここでも紋を入れるかどうかで格は異なりますし、控えめな付け下げであれば豪華な袋帯を締める時と、控えめな名古屋帯を締める時とで格は大きく変化すると思ってください。着こなせると、非常に頼りになる相棒のような着物が付け下げです。
種類6.シンプルなだけに奥深い「色無地(いろむじ)」
「色無地」は地紋(じもん:生地に織り出された柄)、色、家紋だけで構成されるシンプルな着物です。一緒に合わせる帯によって印象が変わるのも特徴と言えます。色無地はフォーマルを中心にさまざまな雰囲気を演出できます。
紋のあり・なしはとても重要で、一つ紋があれば準礼装として茶道や、七五三のお母様として付き添う時の着物に最適です。もしお稽古事を始めようと思う方ならば一枚は持っていて損のない着物が色無地です。紋を三つ紋、五つ紋にすることもできますが、かなり稀なケースです。紋なしの場合は、シンプルなお出掛け着物とすることもできます。
種類7.夏の定番カジュアル「浴衣(ゆかた)」
夏に着用する和服として人気の「浴衣」も和服のひとつ。発祥は平安時代の湯帷子(ゆかたびら)。江戸時代には庶民が湯上がりに着てくつろぐ用途に使われました。近年では若い世代を中心にカラフルなものが人気ですが、二十八では昔ながらの藍色地に白い柄、白地に藍色の柄などが好みです。小千谷縮という麻の着物も大人の浴衣としてお薦めします。
振袖や留袖などのようにフォーマルな和服は着用機会が限られますが、浴衣はカジュアルシーンでいつでも着られます。ただし注意が必要なのは、本来湯上りに着ていた和服なだけにきちんとした場面で着るのは避けた方が良いということです。浴衣は素足が基本なだけに、Tシャツ・ビーチサンダルと同じぐらいに思ってください。星付きのレストランも向かないでしょうし、歌舞伎座なども避けた方が無難です。
もっと詳しく和服の種類を知りたい人は関連記事をチェック
ご紹介したとおり、「和服」にはさまざまな種類があって面白いですよね。
「自分に合う着物が知りたい」「〇〇の時に着用するなら、どんな着物?」など、もっと着物について知りたい方は別記事もチェックしてください。着物の種類について解説しているので、初心者の方にもお勧めです。
参考記事:これで【着物の種類】は完全制覇!着物の13種類をプロが徹底解説!
和服を着るときに効果的なアイテム7種類
いざ自分の好きな和服を着る際、洗練させてもらいたいアイテムがあります。ひとつひとつのアイテムは小さなものでも、加えるだけでグッと印象が変わるので効果絶大!小物選びは本当にセンスが問われる部分なのでしっかりとチョイスしましょう。
ここからは「帯」や「草履」、「バッグ」など、和服に欠かせないアイテムの紹介と、選び方のコツを解説します。
雰囲気に合わせてコーディネートしたい「帯」
和服の印象をもっとも変える和装アイテムといえば、やはり「帯」です。さまざまな製法、色や柄がある帯は、選び方も奥深いもの。
「和服初心者で帯の選び方が分からない」「帯と小物の合わせ方が難しい」など悩みは尽きないものと思います。まず第一に考えるのは和服の格との調和です。格が高い和服、例えば留袖、振袖、訪問着などには格の高い金銀糸を使った袋帯を合わせるということです。
色や柄の調和はセンスが問われる部分ですが、和服との格を合わせた後の話です。
正直、着物初心者の方が和服の帯選びをマスターするのは難しいことなので、着物に詳しいご友人や信頼できる呉服屋を頼りながらお選びになるのが間違いないと思います。
和服用の下着「長襦袢(ながじゅばん)」
洋服着用時にインナーを着るのと同じように、和装時も下着を身に付けます。
まず「肌襦袢」と呼ばれる肌着を身に付けたあとに、「長襦袢」を重ねます。どの和服を身に付ける場合でも必要となるので、ご用意ください。簡易の長襦袢は洗えるものもあってカジュアルによく着る方には便利です。
着付けとコーディネートに重要な「帯締め・帯揚げ」
着物と帯のコーディネートの要にもなる重要な小物が「帯締め」です。帯締めは帯を固定する際に使用する組み紐で、着用シーンによって帯締めの種類は異なります。帯揚げも見えにくいですが、重要なアイテムです。帯と近い色を選んで馴染ませたり、反対のカラーで帯を引き立たせたりと組み合わせは無限大なだけにセンスが問われます
【帯締めの3つの種類】
・平組(ひらぐみ)の帯締め:現在用いられる頻度が高い、人気の帯締め。フォーマルシーンではひとまずこの平組を選んでおくと良いでしょう。
・丸組の帯締め:和服に慣れてきたらお薦めしたい帯締め。丸組みは少ない種類ですが、カラーや紐のタイプによって着用シーンは様々です。
・丸ぐけの帯締め:昔はフォーマルでしたが、最近は少なくなった帯締め。花嫁衣装ではまだ用いられています。
衿元のおしゃれ「半衿・衿比翼」
衿元からチラリと見えるおしゃれを楽しみたい方は、「半衿(写真の白い衿)」や「衿比翼(写真の朱色の衿」にもこだわりましょう。衿比翼はめでたいことを祝う場合など、同じことが重ねて起こっても良い場合に用いるもの。婚礼行事では白が一般的な色ですが、着物に調和する優しく淡い色のものを選んでも構いません。
二十八としては基本的に、「白」の半衿着用をお勧めしています。紬の着物などで自分らしさを表現したい場合には、着物や帯との色を考えながらコーディネートを楽しんでも良いでしょう。
和服用の靴下「足袋(たび)」
「足袋」は洋服着用時の靴下と同じもの。伝統的なタイプは木綿の布で作られ、つま先部分は親指と他4本の指に分けられています。靴下のように履くのではなく、こはぜと呼ばれる留め金で足首部分をとめています。
近年では若い女性をターゲットにレースや花柄模様の足袋も数多く販売されていますが、大人の女性は白い足袋を履きこなすことをお勧めします。また足にフィットしやすいストレッチ足袋もあるので、こちらもチェックしてみてくださいね。
和服用の履物「草履(ぞうり)・下駄(げた)」
「草履」や「下駄」は、洋服着用時の靴と同じもの。親指と人差し指で鼻緒の先坪(さきつぼ:鼻緒の先端部で、草履の台と繋がっているところ。前坪と同義)を挟むようにして履きます。鼻緒の柄や模様は自由に選べるので、着物に合わせたリンクコーディネートも可能。
歩き辛いイメージのある下駄ですが、日本人が経験則で作り上げたものだけあって、ハイヒールよりもずっと歩きやすいのです。
既製品の草履や下駄は鼻緒の調整が標準的なので、鼻緒擦れと呼ばれる靴擦れを起こしてしまうこともしばしば…。もし履物屋さんで草履や下駄を誂える場合は、職人さんに調整をしてもらうと和装が初めてでも歩きやすい締め具合になるでしょう。
アクセサリーとして使う「帯留め・かんざし・扇子」
和装時のアクセサリーとして外せないのが、「帯留め」「かんざし」「扇子」です。洋服で言えば、宝石や細工物で作られている帯留めはブローチ、かんざしはヘアアクセサリーのような物です。最近ではカジュアルな着物に取り入れやすい洋風タイプの帯留めやかんざしも販売されています。
夏場に扇子を使う方は多いものと思いますが、着物の世界では末広がりの意味合いでお祝い事などフォーマルシーンでは必須のアイテムが扇子です。逆に喪服などでは扇子を持たないのが基本とされています。
和服の種類は時代によって進化している
洋装感覚の和服など、着物も時代に合わせて多様化しています。しかしあまりに伝統や基本形式から外れた着こなしは、シーンによっては上品さを欠いてしまことも。
10〜20代でしたらカジュアルシーンでどんな着物を着ていても「よく知らないから」ですみますが、30代も後半ぐらいになって来ると冠婚葬祭や式典など、きちんとした着用シーンも増えるはずです。
着物のしきたりを大切にする人はまだまだ多いもの。フォーマルな着物は“自分の好みだけ”で着るのではなく、ご一緒する皆さんが快適に過ごせるような配慮が大切です。「フォーマルな場では伝統的・正統派の着物を」「カジュアルな場では、帯や小物で自分らしさを表現」といったように、着用シーンや周囲との調和も意識しながらコーディネートを楽しんでみてください。
和服の種類を理解してシーン別に使い分けよう
着物初心者にとってはハードルが高いイメージのある和装は、初めて着用する時にはきっとドキドキすることと思います。しかしフォーマルな場で和服をしっかり着こなしている女性は、品もあって圧倒的に魅力的です。
【和服初心者が楽しむための、着こなしのコツ】
・TPOに合わせた着物のしきたりを学ぶ
・着物のルールが分からない場合は呉服店や和装に詳しい人に教えてもらう
・小物や帯を少しずつアレンジして、自分らしさやセンスを表現する
初めて着物にチャレンジする方は上記のポイントを守りながら、少しずつ和服を楽しんでみてくださいね。

京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。
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