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御誂3-2 訪問着(香色地 地紙に白上げ四季草花)

前回、下絵を白生地に描きました訪問着です。

 

現在、糊糸目を置きまして、挿し友禅まで進みました。写真に写っている草花の輪郭線が赤くなっていますが、こちらがモチ米を主成分として蘇芳で赤色を付けた赤糸目です。この糸目の線も本当に味わい深い良い線です。糸目は水で流してしまうのですが、消えてしまうのがもったいないように思うほどです。ただ、地色と柄色を染めれば糸目糊の痕跡が残るので皆様に楽しんで頂ける事でしょう。

下絵屋さんの線は糊を置いた時点で赤糸目の下に隠れてしまいますし、水元(みずもと:水流の中で、余計な染料や不純物を流してしまう作業)をすると完全に消えてしまいます。それでも絵柄の線一本一本の配置を決めているのが下絵屋さんなので、その部分をお楽しみ頂けましたら嬉しいです。

 

さて、今回は挿し(さし)友禅です。非常に多くの染料を駆使して柄の色を染めて行きます。地色はまた別の職人さんが染めますので、挿し友禅は柄の色だけを染めます。

 

この色目から蒸しをするともう少し発色し、水元で染料が流れ落ちるので色目は薄くなります。こちらは糊糸目なので水を通すだけで済みますが、ゴム糸目(水色の糸目)の場合は揮発溶剤で水元をするので色目がだいぶん薄くなります。もちろんゴム糸目を使う場合はそれも見越した染めです。また揮発の水元をすると塩瀬の染帯などは生地がクタクタになり、それだけでもゴム糸目かどうか判断できるほどです。

 

 

こちら最後の写真では右側と左側の枝の色にご注目ください。左側の枝の色は胡粉の白色、右側の枝の色は“白ごろし”と言って胡粉に僅かながら色を混ぜています。これにより何本も伸びる枝が均一になり過ぎないよう、奥行きを出しているのです。細かい点にも、丁寧な仕事をしてくれています。

 

またこの段階でも簡単に糊糸目かゴム糸目かを判断する方法がありまして、注目するのは地色です。分かりにくいので下記URLをコピーの上、開いてご覧になりながらお読み頂けましたら幸いです。

京都工芸染匠協同組合さん 京手描き友禅製作工程図

http://www.sensho.or.jp/kimono_encyclo/kimono_work/

柄色を先に染めている(地色が真っ白)のが糊糸目、地色を先に染めている(柄色が真っ白)のがゴム糸目です。これは真水で水元をするか、石油系揮発溶剤で水元をするかによります。まず地色を先に染める場合には糸目を置いた後、柄の上に全て伏せ糊をしなければなりません。この伏せ糊にはモチ米の糊を使いますので、地色を染めた後に水元をすると流れてしまいます。この時、糸目がゴムであれば真水の水元では流れないので、先に地色を染めてから柄色の挿し友禅ができます。しかしながら糊糸目の場合に、もしこの順番で作業をしますと“水元”で糊糸目まで洗い落とす事となってしまいます。しかもその時点で青花で描いた下絵も全て流れてしまっていますから、草稿でもない限りはもう一度下絵からという事になってしまい現実的ではないのです。

こんな細かい事は皆さんがご理解頂く必要もないのですが、下記だけでも覚えて頂けましたら実演している職人と話す機会などには非常に楽しく弾む話ができると思います。何しろ糊糸目をやっている職人さん、悉皆屋はそれに対してプライドがありますから。

・地色よりも柄色を先に染めていれば糊糸目

・柄色よりも地色を先に染めていればゴム糸目

 

単純に順番だけの差のだけにも思えるのですが、柄色を先に染めるというのは慣れた職人さんでなければ簡単な事ではありません。なぜならば、地色が先に染まっていれば、柄色を染めながら全体の染め上がりの想像が容易なので、非常に染めやすいのです。しかしながら今回の訪問着のように糸目糊を利用した場合は、悉皆屋(二十八)から出された2✕10センチ程度の地色見本と並べて、それに合わせて想像しながら柄色を友禅していくのです。さらには水元で薄くなる分まで加味して。慣れてこそできる作業でしょう。染め上がりが楽しみです。

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この記事を書いた人
原 巨樹 (はら なおき)
原 巨樹 (はら なおき)

職人の後継者育成を目指し、2014年に京都で二十八を創業。京職人とのネットワーク、お客様とのコミュニケーションを通じて、世界でただ一つの着物をプロデュースできることが強み。 日々、呉服業界のグランドデザインを変えて行くために、京都、東京を中心に仕事をしています。

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原巨樹(はらなおき)

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京都でベンチャーの高級呉服店を経営。1980年生まれ、元海上自衛官。

Photo by HAL HOSHINO