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御誂4-2 付下げ(白地 梅散らし)

白地 梅散らしの付下げについて。

実はこの着物について早く書きたかったのですが、中々続きを書く事が出来ませんでした。というのも、この梅柄にアップリケするための絞りの生地を染める事、約一月半。なかなか私の目指す染め上がりにならなかったので、炊き染め職人さんに懲りずに付き合って頂いて、染めた回数は最終的に8回

絞り染めは生地を染めて、絞った糸を解いて初めてその仕上がりが分かります。それは熟練の職人さんでも変わりません。

今回、この御誂えのご注文を頂いてから、まずは絞りの生地を探しました。こうしたアップリケ用の絞り生地を探す場合、普通は既に染め上がっている振袖用の絞りの帯揚げで探します。しかしながら今回は最高の着物を作るために、まだ絞りの糸が括られたままの白生地を調達したのです。

下の写真だけでは分かりにくいと思いますが、絞りの糸が括られたままの状態です。そして購入したのは右側で、見比べると左よりも括った粒が均一で綺麗に並んでいます。括った職人さんの“手”の良さという事も当然ながら絞りの染め上がりに影響します。

ちなみにこの本疋田の白生地はいわゆるデッドストックで、少し以前に、中国の名人が絞ってくれたものです。反物幅、一尺の間に45粒が括られています。日本の絞り職人さんが大事にとっておかれた最後の一枚を譲って頂きました。

ついでながら通常帯揚げ用として絞られている技法は、四つ巻き絞り、横引き鹿の子絞りなどと呼ばれます。やり方は白生地の絞りたい場所を、カギ針の先に引っ掛けて綿の糸を巻きつけた管を持ちながら4回括ります。染め上がりを見れば概ね分かるのですが、括った先っぽが大きめの点になり、谷間もクッキリと染まります。蛇足ながら中国の絞りであっても、京都で染めると「京鹿の子絞り」という伝統工芸マーク付きで、呉服店では販売されていますので御注意ください。

 

今回の本疋田は非常にバランスが取れた良い絞りで、本疋田らしい染め上がりであり、かつ中心の点もそれなりの大きさで華やかさが出ますし、擦り疋田とのバランスもとても良いものとなりました。

 

8回も繰り返して原が染めたのは、この本疋田らしさを出すために谷間の部分は染め過ぎずに、それでいて華やかな色に染めるために長時間炊き染めするという事に挑戦したからです。また色味にも大変調整が必要でした。

仕入れた白生地は帯揚げの長さなのですが、価格は四つ巻き絞りの10倍。通常絞りの帯揚げは2万円ぐらいの小売値ですから20万円はするものです。そうなるとこの白生地を一本丸ごと染めると、上がりに関わらず使わざるを得なくなってしまいますから、必要分だけ切って染めました。ところが炊き染め職人さんは、いつも着物や長襦袢の大きさを染めているので今回のような10cm×10cm(絞りを解くと38×38cm)の小さいものですと鍋の大きさから染料の具合まで勝手が違って来るのです。鍋の大きさは一枚目の写真で、職人さんのバックに写っているのが通常の炊き染めに用いられるものです。

それゆえ職人さんからは「こんな面倒な仕事、普通は断るで〜」とも言われました。しかしながら二十八のモノ作りへの情熱をご理解頂きましたので気持ち良く引き受けてくださり、私が納得するまで粘り強く付き合ってくださった大好きな職人さんです。

そうした中で始まったチャレンジでしたが、最終的にとても満足できる仕上がりになりました。工夫としては谷間(裏側)が染まり過ぎないようにペットボトルに縫い締めたり、ビニールに縫い付けたり。また染める前に浸す糊の具合を濃くしたり薄くしたり。はたまた染める時間を長くしたり短くしたりします。

 

これらの組み合わせに加えて色味を赤っぽくとか朱っぽくとか、仕上げる着物に合わせて調整していきます。

そんな調子ですから、8回も掛かってしまった訳です。

完成品は次の行程に取り掛かるため、すぐに擦り疋田屋さんに持って行ってしまったため写真を撮れておりませんが、他の写真により、雰囲気を感じ取って頂けましたら幸いです。

 

 

こちらの写真では粒と粒の間の部分の白さ(わずかですが!)にご注目ください。上の生地の写真は谷間が下の生地よりも白く残っています。下の生地は谷間まで赤く染まっていまして、ところどころ白い上がり具合です。この差が糸をほどいた時の仕上がりに影響してきます。

 

実際にほどくと、、、

 

このような仕上がり具合でした!少し右側の方が白っぽいのがお分かり頂けますでしょうか。こんな事を何度も繰り返しまして、8回めにようやく納得の行く色、絞りの良さが表現できた生地となったのです。ちなみにこの本疋田をほどく作業、かなり力が必要です。柔軟をかけておけばそこまで苦労もないようですが。私は夜な夜な絞りをほどく事を楽しんだのですが、翌朝、起きると指がすっかりむくんでしまっていたり、指に水ぶくれができてしまったり、と中々の作業でした。ちなみに夜行うのは日中に染めてもらいまして、絞りを解く状態では完全に乾いていなければ生地が破れてしまうためです。それゆえ日中から乾かして、私も早く上がり具合が見たいのでいち早くその日の夜には糸を解くという段取りになるわけです。

 

さて、これに大変時間が掛かってしまったわけですが、何しろこの絞りの染め上がりがスタート地点なのです。この絞りの染め上がりに合わせて摺り疋田、挿し友禅を行って行くわけですから、これでようやく次の工程に進めます。

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この記事を書いた人
原 巨樹 (はら なおき)
原 巨樹 (はら なおき)

職人の後継者育成を目指し、2014年に京都で二十八を創業。京職人とのネットワーク、お客様とのコミュニケーションを通じて、世界でただ一つの着物をプロデュースできることが強み。 日々、呉服業界のグランドデザインを変えて行くために、京都、東京を中心に仕事をしています。

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京都でベンチャーの高級呉服店を経営。1980年生まれ、元海上自衛官。

Photo by HAL HOSHINO