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御誂5-3 夏の訪問着(inspired by 谷崎潤一郎)

以前からご紹介しておりました細雪からイメージした夏の訪問着、ひと通りの工程をご紹介いたします。

 

●下絵の“あたり”

御誂えですから、まずは御誂主様からのご要望を下絵で“あたり”ます。“あたり”とはラフスケッチのことです。ラフスケッチで御誂主様に図案の配置などをご確認頂いてから、本番の下絵に進みます。

 

●白生地の検反

 生地に傷やシミがないか、美しい反物であるかを検査します。ちなみに白生地は新潟県五泉市の特Aの絽です。現地まで買いに行きました。

 

●湯のし

 生地の幅を整えます。また絽の生地なので2回湯のしをする必要があります。片方からだけだと反物中央部にたわみが出てしまう可能性があるので、逆方向からも再度湯のしを行うのです。

 

●墨打ち

 湯のしにより、きちんと整った反物の要尺を測り、御誂主様のご寸法に合わせて墨打ちをします。墨打ちとは反物の端に、どこが袖でどこが身頃か、など印を付けていくことです。京ごふく二十八は御誂えですから、その方のご寸法にちょうど良い塩梅にできるのはもちろんのこと、もしお嬢様がいらしたりすれば、そのお嬢様にお譲りになる時のことまで考えた墨打ちが可能です。

 

●下絵羽

白生地を御誂主様のご寸法に合わせて絵羽にします。身幅や裄、身丈まで全て仕立上がりの寸法に仮縫いします。

 

●下絵

青花を使って、下絵羽した白生地に下絵を描きます。京ごふく二十八では代用青花というものを使っています。実は下絵のあたりに本青花を使っています。

 

●解き端縫い

下絵羽していた生地を解いて、もとの反物状態に縫い合わせます。反物状態で仕事をしやすく、また持ち運びもしやすくなります。ここにも逸品物を作るためのノウハウがあるのですが、後ほど触れます。

 

●糊置き

モチ米をつかった糊で、糸目を置いていきます。現代の京友禅のほとんどはゴム糸目ですが、京ごふく二十八では糊糸目による製作をメインとしています。糊糸目による仕上がりは糸目の仕上がりがムックリとして、非常にあたたかい雰囲気があり、他に替えがたい味わいがあるのが大きな魅力です。糸目糊まで味わえるのは通の通です。

 

●地入れ

豆汁を引いて糊置きした糊を生地に食い込ませます。これにより防染効果が高まると共に、発色が良くなります。京ごふく二十八では地入れだけをやっている専門の職人さんにお願いしていまして、こちらの職人さんの仕事場は室内ですが、土間になっていますので乾きがゆっくりです。またお願いして晴れた日に作業をしてもらっていますから、糊糸目が細く仕上がります。雨の日に地入れをするとウドンのような糸目になってしまいます。

 

●挿し友禅

熟練の職人さんによる挿し友禅です。

 

●蒸し

発色させて、色を定着させるために高温で蒸します。

 

●伏せ糊

これから地色を染めるために引き染めをするのですが、その前に挿し友禅(柄)のところに地色が染まらないように伏せ糊をします。

 

●引き染め

大きな平刷毛で、地色を染めます。染める前に引き染め屋で再度地入れをして防染効果をさらに高めてから染めます。

さて、この引き染めのために重要なのが解き端縫いする時、各パーツを並べる順番です。絵羽の着物を見た時、地色は”均一”に染まっているように見えるものですが、実際はそうではありません。引き染めをする場合、両端はロープに接続されており、そのロープを強烈なテンションで引っ張った状態で柱に括りつけます。しかしながらそれだけ引っ張ってもやはり中央部はたわみますし、乾きが均一ではなく、早く乾いたところに染料が偏りますから色にも僅かなグラデーションが出てしまいます。引き染めも手仕事であり、プリンターで染めているのと異なりますから、どうしても仕方ないことです。しかしながら着物となった場合にその差異が目立たないように、仕立て上がった時に隣り合う場所を並べて解き端縫いするわけです。下の写真の中央部に端縫いした位置が写っていますが、上下は後ろ身頃の裾部分です。後ろ身頃の裾部分は2つ並んで視線を浴びますからこのような配置になるわけです。また上前(左前身頃)と上前衽も連続して端縫いしてあります。細やかですが、こんな工夫もあるのです。

 

●蒸し・水元

今度の蒸しは地色のための蒸しです。同じく、発色と染料定着のためです。その後、糊糸目や余分な染料を落とすために水元(友禅流し)に進みます。糊を掻き落とすために、しばらくの間、流水に浸けておきます。時間の段取りが重要な仕事場なのと、出入りにもちょっとばかり気をつかいますので、貴重な写真です。

  

蒸し、水元が終わるとこんな状態です。まだ輪郭がクッキリしていないので、何となく全体がボヤ〜ッとした雰囲気です。しかしながら注目は垣根の部分で、これから銀彩をするのですが、そのための土台の色がグレーに染まっています。

 

●湯のし

 ここで再度湯のしをします。これまでの工程で、反物の幅も長さも各所で伸び縮みが出ています。例えば引き染めでは思いっきり引っ張った状態で染めますので、生地にもよりますが、30センチから1メートルも生地が伸びてしまいます。反物幅も伸子張りを何度もされていますからマチマチです。それらを一度元の状態に整えるのです。

 

●銀彩・仕上げ

輪郭と、垣根を銀彩しました。すごく印象が変わります。

さらに萩の葉の中心に葉脈、撫子の花の中心に黄色いシベをを描き入れました。これを仕上げといいます。

 

●刺繍

垣根の輪郭部にかき消しで銀駒刺繍をしています。また撫子の花びらにカスリの刺繍も入れています。これが実際お召しになった時にキラっと光り、大変美しいものです。

また今回は縫紋も施しました。縫紋のために、一度、下書き専門の職人に出されてから再度刺繍職人の元に戻って来ます。

 

※既成品の場合は、ここで上げ絵羽という工程が入りますが、京ごふく二十八の場合は御誂えですから、このまま仕立てに進みます。上げ絵羽とは呉服店の店頭で衣桁に掛けて飾られるために、仮縫いによって着物の形に仕立てることをいいます。

 

●ガード加工

 これはお好みによりますが、撥水ガード加工をご希望の場合は、この状態で加工をします。

 

●仕立て

仕立て上げると元の図案がよみがえり、大変素敵なな訪問着が姿を表しました。手描きの京友禅で品物を作りますと、以上のような手間が最低限掛かります。仕立てまで含めまして、だいたい3〜4ヶ月が目安です。

 

夏の訪問着、それもお若いお嬢様の御誂えです。この訪問着に関しては、小説「細雪」の文章から図案を起こすという御誂主様のご着想が何より素晴らしく、行く先々で話題になること間違いなしです!私もお召しになった御姿を拝見できる機会が楽しみで仕方ありません!

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この記事を書いた人
原 巨樹 (はら なおき)
原 巨樹 (はら なおき)

職人の後継者育成を目指し、2014年に京都で二十八を創業。京職人とのネットワーク、お客様とのコミュニケーションを通じて、世界でただ一つの着物をプロデュースできることが強み。 日々、呉服業界のグランドデザインを変えて行くために、京都、東京を中心に仕事をしています。

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京都でベンチャーの高級呉服店を経営。1980年生まれ、元海上自衛官。

Photo by HAL HOSHINO