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職人と悉皆屋Column

御誂6-1 付下げ訪問着(柳桜をこきまぜて)

見わたせば柳桜をこきまぜて宮こ(都)ぞ春の錦なりける

                        〜古今和歌集〜 素性法師

 

ただいま染め出しております御誂えのお着物は、柳桜に加えまして桜文鳥を表しました付下げ訪問着です。地色はグレイッシュで、非常に淡い柳色に染めます。優美な柳と枝垂れ桜が、たおやかな雰囲気を着物に与えてくれる事と今から楽しみにしております。

上前裾部には小山には、御誂主様が飼ってらっしゃる桜文鳥を番い(つがい)で配置します。もちろんこれは円満なご夫婦を表現し、お子様は元気良く出袖(デソデ:右袖後ろ)に羽ばたいている文鳥として表現させて頂きます。普通でしたら雀になるところですが、桜文鳥とする事になったのもまさしく御誂えでなければできない遊び心です。既成品では文鳥をこうしたフォーマル物に染め出す事はできないでしょうから。

 

ちなみに私も初めて知りましたけれども、文鳥というのは雌雄の判別が極めて難しいものなのですね!ペットショップでさえ文鳥がヒナの頃は絶対の判断ができず、「もしオスメスが間違っていたら交換します」などという表示も出ているそうです。また多様に交配が進んでいる事もあり、桜文鳥に見えないけれど桜文鳥、桜文鳥に見えるけれど違う種類の文鳥、など見た目だけで判断すると種類を間違う事もあるそうです。お陰様で私も色々と調べましたから、ちょっとした文鳥博士になった気分です!

 

下絵はもちろんいつもお願いしている熟練かつ非常にセンスの良い職人さん。草稿で描いてもらっています。

 

こちら下からライトを照らしておりますのは、ちょうど上前身頃と衽が重なる部分ですので、同じ柄を描くために下からライトを当てて描いています。当然ながら筆を使って描いて行きます。下絵職人さんによっては鉛筆やマジックで描くという方もいらっしゃいますが、やはり筆を用いて描いた下絵の伸びやかさに勝る物はありません。

 

こちらは下絵に取り掛かる前のラフスケッチです。ちょうど衿から胸を通って裾に向かう枝垂れ桜と柳を描いています。

また下絵の本番に取り掛かる前には文鳥のスケッチも。ただ可愛らしい文鳥という以上に、全体の構成を考えてバランス良い桜文鳥を探します。

 

 

ちょっとしたご紹介ではありますが、着物を染める前には様々な職人の研鑽や、ドラマ、ストーリーがある事を垣間見て頂けましたら大変嬉しいことで御座います。

こうした御誂の場合は、御誂主様だけのために職人たちも筆を振るいます。普段、職人たちが携わる仕事というのは、問屋や染屋(メーカー)などからの依頼ですから、お召しになる方のイメージはほとんど持たずに仕事をしています。それが御誂となると具体的にお客さまのご希望やニーズ、お好みを踏まえて染めて行くわけですから力の入りようが異なるのも当然の事でしょう。

 

正直に申しまして、柳と桜は私の大好きなモチーフであると共に呉服屋を始めて以来(7年ほど)、非常に大きなテーマでもありました。呉服屋を志して前職を辞し、全国の着物産地行脚と就職活動をやっている時に、4月の京都で観た本当に美しい柳と桜の色と姿には心を奪われました。特に祇園や鴨川付近の美しさと言ったら表現できません。常々、この柳桜の美しさをどうすれば着物に表現できるかと考え抜いて来ましたらから、今回このような御誂をさせて頂けます事は無上の喜びに感じます。

 

こちらの着物は4月上旬の仕立上がりに間に合わせるため、写真取材よりも染めをスムーズにやってもらう事を優先しますので、あまり写真でのご報告は多くなりませんけれども、何とか都度ブログに掲載できるようにと存じます。

 

必ず最高の着物になりますので、楽しみにお待ちくださいませ!

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この記事を書いた人
原 巨樹 (はら なおき)

京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。

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