御誂3-3 訪問着(香色地 地紙に白上げ四季草花)
地紙の訪問着の引き染めをしました。
香色と称しますが、クリアな黄色味のベージュ色に染めます。引き染めの前にはまず豆汁(ごじる)で地入れを行い、糸目の浸透促進、染めの仕上がり向上を図ります。
引き染め工房は大抵3丈の反物生地を張る長さしかありません。そのため表地と八掛は別にして生地を引っ張ります。引き染めをする場合、反物生地の端にロープを繋ぎ職人が強く引っ張ります。そのため生地によりますが、3丈の生地が1尺から場合によっては2尺以上も伸びる事があります。最終的に蒸し、水元、湯のしをする事で概ね元に近い寸法に戻ります(打ち込みの甘い生地によっては戻らない反物もあるはずです)。また塩瀬の生地は伸びてしまうのでそれも見込んで反物の墨打ちをします。
引き染めは刷毛で1往復半(3回)染めます。一回目は刷毛に染料を付けて染めるのですが、一度目はムラが出るのでそれをならすためにもう一往復(2回)刷毛でこするようにして染料を馴らして行きます。最後に刷毛から抜けて生地にくっついている毛をピンセットなどで摘んで、後は反物を乾かすだけです。地色はこの時点で当然完成に近い色で染まっていますが、さらに蒸しをして発色させてから色味を確認し、水元をして余分な染料が落とせば地色は染め上がりです。
刷毛で染める時、柄のところは慎重に染めるのかと推測していましたが、実際は無地のところも柄のところも刷毛でこする加減はあまり変化させずに染めます。
今回のような薄い色目は割合スムーズに染まります。一度目の引き染めで、水ムラのようなものが見受けられましたが、これも薄い地色の場合は水元などですぐに消えてしまいます。ところが濃い地色の場合に同じようなムラが見える場合、これは水ムラではなく染料ムラなので、修正の難しい染め難となってしまいます。濃い地色の難しいところです。
地色が染まると伏せ糊が濡れて少し透明感が出たように思います。この後は蒸し、水元と作業は続きますのでまた改めてレポート致します。お楽しみ頂けましたら何よりです。
京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。
あわせて読みたい記事
-
【青花紙】のご紹介
本日は、京都新聞に掲載されていました「青花紙、担い手育成」に関する記事を、ご紹介します。 まず青花紙(あおばながみ)についてご説明しますと、青花紙とは原料となるアオバナ(オオボウシバナ)の色素を染みこませた和紙のことです […]
-
【染め帯】作成課程のご紹介
こんばんは。ブログをご覧くださり有り難うございます。 京都は、少しずつ暖かくなり、春の花々も咲き始め、ようやく春らしくなって参りました! さて、近頃は、春に咲く花を描いた着物や帯を順次製作しておりました。 […]
-
【袱紗】戌年の本年にぴったりです!
いつもブログをご覧いただき有難うございます! 平成30年は戌年ということで、円山応挙が描いた子犬をモチーフに、袱紗を作成いたしました! ほんの一部ですが、作成過程をご紹介したいと思います。 下絵:下図職人が描きます。 & […]
人気の記事
-
誰でも一瞬で【付け下げと訪問着の違い】を見分けられる京都の秘伝!
すべて読むと【15分】 流し読みで【5分】 訪問着と付け下げの違いについて、実をいうと、プロの呉服屋でも矛盾なく説明できる人はほぼいません。 これを皆さんが本当に理解しておいてくだされば、それだけ無駄な買い […]
-
呉服店では怖くて聞けない【訪問着 値段の相場】プロが教えるここだけの話
訪問着の値段について、初めて着物を買おうと思われる皆さんは「相場っていくらぐらいなのだろう?」と迷われる方は多くいることでしょう。 ズバッと「いくらぐらいの訪問着を買ってください!」と言えれば良いのですが、着物に対する価 […]
-
【リオ】小池百合子 東京都知事の着物を賞賛すべき8つの理由。
リオ閉会式における小池都知事の着付けや、立居振舞について、ネット上で多くの批判が並んでいる様子を見て非常に驚きました。なぜならば小池百合子さんのお着物姿、完璧と言って良いぐらいの着物選び、コーディネートだったからです。 […]