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職人と悉皆屋Column

御誂4-5 付下げ(白地 梅散らし)

白地、ちらし梅の付下げについてです。

先日、摺り疋田についての記事を書きました。さて、上物の摺り疋田をほどこした場合、ほぼ必ずやらなければならない作業があります。それは、、、

 

「目消し(めけし)」です。

 

通常、梅の花の中を摺り疋田で染めますと、梅の花の輪郭部分に沿って染められた摺り疋田の粒一つ一つが途中で切れてしまっているのです。そこで途切れてしまった粒を染料で後から塗り潰す作業を目消しというのです。何のためにやるかと言えば、そもそも本疋田、四巻鹿の子絞りに似せるための摺り疋田なので、本物の絞りに近付けるためかと言えるでしょう。着物の生地そのものを絞った着物の場合は、摺り疋田輪郭部分のように途中で途切れてしまっている粒はありません。絞りの場合、生地に余裕のある部分を絞って、絞る余裕のないところは絞らない。人が選別しながら行う手作業で、「0か1」というデジタルなのです。それに対して摺り疋田は型染めでズボッと染めますので輪郭部分では0.3があったり0.8があったりする「アナログ」な数え方になります。

ちょっとわかりやすいように見本裂を目消ししてみました。模様のようになって見える部分が目消しした所です。だいぶん雰囲気が変わるというところがお伝えできましたら幸いです。またこうした見本裂はめったに職人さんも染めません。私からお願いして、一先ず様々な赤い色で摺り疋田の見本を作ってもらったのです。上の写真ではあまりはっきり出ていませんが、右端からローズ、ピンク、赤、朱で染めてもらっています。

 

ちなみにこの目消し作業は私、原巨樹が実施しました。もちろん職人さんに任せても良いのですが、やはり仕上がりの意図を伝えるためには、いくつか見本として原が染めて見せるのが一番良いとのこと。それならば自分でやってしまった方がベストの染め上がりになるよ、と話し合っての事です。作業そのものはとても簡単で、摺り疋田を染めた染料をもらって来て、それにニジミ止め(トメゾール)を入れて筆で染めて行くという感じです。

これの何が難しいかと言うと、「どの粒を消してしまうか」という事です。あまり気にしない悉皆屋さんの場合は、途切れている粒を全て潰して「0か1」にしてしまいます。しかしながらこの付下げの場合は、横に本疋田のアップリケが並びます。このアップリケは当然摺り疋田と同じように輪郭部分では粒が途切れてしまっていますけれども、本疋田ですから目消しは当然やりません。それゆえ摺り疋田の輪郭全てを目消しをしてしまうと、本疋田に対して輪郭が非常に強調されてしまうのです。では、本疋田と同じように全く目消しをしなければ良いかと言えば、そこは上物を作る悉皆屋として目消しはやりたい。

という矛盾した気持ちを抱えているものですから、そんなややこしい事は職人さんに言わず、自分でやってしまおうという事になるのです。

 

そして大変うまく目消しできましたのがこちら。(摺り疋田をする前後、ビフォー・アフター写真で掲載します。目消しの前後は、若干印象が違うという程度にしか差がないものですから)

端っこがわずかに赤くなっているのが目消しをした部分です。

 

 

これまで挿し友禅のツボミだけでしたから上品ではありましたが、華やかさが少なかったですね。でもそこに摺り疋田の梅の花が咲きますと、非常に華やかさが出てきました。

ただ現在は糊糸目の墨色の輪郭線が残っていますが、これから蒸し水元を行う事でこの輪郭線が無くなり、また赤や黄緑の染料が若干流れ落ちますので、もう少し控えめな印象になります。さらには挿し友禅と摺り疋田、とりわけ摺り疋田は蒸しを行うことで発色するため、またまた印象が変わるのです。今は赤っぽい摺り疋田が蒸しをするともう少し朱に近付きます。そんなわけで、途中の工程は私も喜んでお目に掛けますけれども、こうした微妙な印象の変化があるのでタイミング良くお目にかけなければ、お客様もご心配なさるかなと感じています。ですから実物よりも、ブログで楽しんで頂きつつ、職人さん達と二十八、原にお任せ頂ければ必ず素晴らしい着物や帯に染め上げます。

というわけで、乞うご期待!

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この記事を書いた人
原 巨樹 (はら なおき)

京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。

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