柄による「区別」 ~その1~
前回は、色、柄、格、年齢、素材感について視点を分けながら「区別と調和」を見ていきましょうとお話しました。
しかしながら言うは簡単、やるのは難し。
そこで今回は柄に着目してご説明します。
左図がビフォー、右図がアフターです。
どちらも着物は御所解き模様で、小さい草花が込み入った感じの柄行です。
その着物に対して合わせている帯が、左図は紅葉柄でやはり小さく込み入った柄行です。皆さんご覧になってみて如何でしょうか。目線の落ち着きどころがなくて、すっきりしない感じがすると思います。
つづいて右図で合わせている帯は、少し大きめの七宝柄です。着物の小さく込み入った柄行に対して、幾何学的な曲線が「区別」を感じさせてくれます。それにより目線に落ち着きどころができますし、全体的にすっきりした印象を感じると思います。
『区別と調和』の観点で言いますと、左図は「区別」が足りません。逆に「調和」が強すぎるわけです。
もっとわかりやすく言うと「ゴチャゴチャ」している。
右図は柄による良い「区別」の例です。着物の御所解き模様に対して、同じく古典的な七宝柄で「調和」の要素もあります。
今、記事を書いていて思ったのですが、帯の柄合わせにおいて、柄行きの上ではしっかり「区別」をする方が望ましいです。御所解きの着物に対して帯の合わせで言うと、無地、霞、(はっきりした感じの)御所車、檜扇ひおうぎなどが「区別」をする上で良いでしょう。ここで言う柄行きとは柄の流れ、パターンの事です。
柄行き(柄の流れ、パターン)がしっかり「区別」できていたとしても上手くいかないケースがあります。どういうケースかと言うとクリスマスの柄や動物柄、遊びっけのあるモダンな柄などです。これらは柄行とは別に、“柄に込められた意味合い”という観点で「区別」の要素が強すぎる柄だと言えるでしょう。
帯合わせについて、少しでもご理解が深まったならば何よりです!
京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。
あわせて読みたい記事
-
【青花紙】のご紹介
本日は、京都新聞に掲載されていました「青花紙、担い手育成」に関する記事を、ご紹介します。 まず青花紙(あおばながみ)についてご説明しますと、青花紙とは原料となるアオバナ(オオボウシバナ)の色素を染みこませた和紙のことです […]
-
【染め帯】作成課程のご紹介
こんばんは。ブログをご覧くださり有り難うございます。 京都は、少しずつ暖かくなり、春の花々も咲き始め、ようやく春らしくなって参りました! さて、近頃は、春に咲く花を描いた着物や帯を順次製作しておりました。 […]
-
【袱紗】戌年の本年にぴったりです!
いつもブログをご覧いただき有難うございます! 平成30年は戌年ということで、円山応挙が描いた子犬をモチーフに、袱紗を作成いたしました! ほんの一部ですが、作成過程をご紹介したいと思います。 下絵:下図職人が描きます。 & […]
人気の記事
-
誰でも一瞬で【付け下げと訪問着の違い】を見分けられる京都の秘伝!
すべて読むと【15分】 流し読みで【5分】 訪問着と付け下げの違いについて、実をいうと、プロの呉服屋でも矛盾なく説明できる人はほぼいません。 これを皆さんが本当に理解しておいてくだされば、それだけ無駄な買い […]
-
呉服店では怖くて聞けない【訪問着 値段の相場】プロが教えるここだけの話
訪問着の値段について、初めて着物を買おうと思われる皆さんは「相場っていくらぐらいなのだろう?」と迷われる方は多くいることでしょう。 ズバッと「いくらぐらいの訪問着を買ってください!」と言えれば良いのですが、着物に対する価 […]
-
【リオ】小池百合子 東京都知事の着物を賞賛すべき8つの理由。
リオ閉会式における小池都知事の着付けや、立居振舞について、ネット上で多くの批判が並んでいる様子を見て非常に驚きました。なぜならば小池百合子さんのお着物姿、完璧と言って良いぐらいの着物選び、コーディネートだったからです。 […]