着物を誂える前の基礎知識
【今後、改訂予定】
お誂えくださる前に、少しだけ知識として知っておいて頂けたらということを記しています。また、代表的なことについてのみ掲載しておりますので、ご了承ください。お誂えにおいては、これらのことを知悉した京ごふく二十八が、必要に応じてご説明申し上げますのでご安心頂けたらと存じます。
1.季節
着物と帯には、それぞれにふさわしい季節があります。その区分は仕立て方と生地を基本に判断されます。
・袷(あわせ):表地に裏地を合わせた仕立て、透けない生地 1~5月、10~12月
・単衣(ひとえ):表地だけの仕立て、透けない生地でサラッとした風合い 6月、9月
・薄物(うすもの):表地だけの仕立て、透ける生地、7月、8月
2.TPO
着物は着用シーンによって、選ぶ種類が変わります。
・留袖:既婚女性の第一礼装。裾周りだけの豪華な柄、5ツ紋
・色留袖:裾周りだけの豪華な柄、3、5ツ紋
・振袖:未婚女性の第一礼装。
・訪問着:全体に豪華な柄がある社交着。
・付け下げ訪問着:訪問着に準ずるフォーマルな柄行きの着物。
・付け下げ:フォーマル着物の中で柄のボリュームが軽い着物。
・色無地:名前の通り、柄のない染めの着物で、紋を入れることで控えめながらフォーマルな使い勝手が可能となる。
・小紋:型染め着物の総称。
・お召し:糸を染めて作る織物で、上等な普段着。
・紬:普段着
3.染めと織り
・染めとは、真っ白な生地を染めて色柄を表した品物。キャンパスに絵を描くのと似ている。
・織りとは、先に糸の状態で色を染めてから織り上げる。柄を表現するためには二つの方法かあり、一つ目は、一本の糸をいくつかの色に染め分けて織る、絣(かすり)技法。二つ目は西陣織、博多織に代表される技法で、複数の色糸を使いデジタルカメラのように座標軸にドットの如く特定の色糸が表面に来るよう糸を上げ下げして織り上げる技法。
フォーマル:染めの着物、織りの帯
(留袖、振袖、訪問着、色無地など)、(錦織、唐織、綴れ織など)
カジュアル:染め・織りの着物、染め・織りの帯
(小紋)(お召、紬など)、 (染め帯)(紬、すくい織など)
4.家紋
家紋は入れる数と、紋を表現する技法、デザインの変化(日向紋、陰紋、覗き紋など)によって格が上下します。家紋についてはなるべくご家族皆様でお話し合いになって、関わる皆様がご納得くださる家紋選びをなさってください。
・数:紋なし、1、3、5個
・紋を入れる技法:抜き紋:染めで表した紋
縫い紋:刺繍で表した紋
・デザイン:日向紋:面で表す。
陰紋:輪郭線のみ。
丸:丸があると仰々しく、丸なしならば少し優しく女性らしくなる。
覗き紋:仰々しくならないように小さくアレンジ
・女紋:女性に限り、ご実家の家紋を引き継いだり、実母様の家紋を引き継ぐケースが御座います。比較的関西以西で多い風習です。関東の方は嫁ぎ先の家紋を入れられる場合が多いです。ご自身のお好みで、自由にお選び頂くことも可能です。
5.ご寸法(サイズ)
主にご身長、裄、腰回りのご寸法を採寸させて頂き、細部は仕立て職人と相談して決めさせて頂きます。お客様のご希望がございましたら是非お申し付けください。もし、よくご着用されるお手持ちの着物がおありの場合は、そちらのご寸法を参考にしてお仕立てさせて頂きます。
通常の呉服店ではすでに染め上がった商品を、お客様のサイズに合わせて仕立てる形式ですが、京ごふく 二十八の場合、お客様のご寸法に合わせてデザインを決めて行きます。
6.ガード加工
ガード加工とは、小雨や少しの水ぐらいであれば弾いてくれる撥水加工のことです。着物や帯にガード加工を施しておけば、ちょっとした雨ぐらいでシミができるリスクを軽減してくれます。ただし強く雨が降る場合や、60℃以上の液体(例えば熱いコーヒーなど)に対しては効果が無くなるのでご注意ください。
なお、この加工は生地に樹脂を定着させる加工であり、わずかながら硬くなるという風合いの変化が御座います。風合いを大切にしている、本場結城紬や一部の織物作家さんによって作られたお品物にはあまりお薦めしませんが、京友禅の場合は、お好みで構いません。経年、ご着用頻度によって、加工が弱まって来るなど、撥水ガード加工には一長一短がございますので、ご不明点につきましてはご相談くださいませ。
【以上、お誂えになる前の、簡単な基礎知識でした。今後、写真の追加や、文章の改訂を行なっていく予定です。】
京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。
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