誰でも一瞬で【付け下げと訪問着の違い】を見分けられる京都の秘伝!
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訪問着と付け下げの違いについて、実をいうと、プロの呉服屋でも矛盾なく説明できる人はほぼいません。
これを皆さんが本当に理解しておいてくだされば、それだけ無駄な買い物をするリスクが減りますので、何十万円、何百万円のメリットがあると思います。
さて、いきなり答えを書いてしまうと、
訪問着は豪華な柄のフォーマルな着物
付け下げは控えめな柄のフォーマルな着物
ということです。
ですから「訪問着と付け下げの違い」を見分ける唯一のコツは、
パッと見て豪華ならば訪問着、控えめならば付け下げ
となります。ご理解いただけたでしょうか。
「そんな答えは簡単すぎる!もっと難しいプロだけが知っているポイントがあるはず!」と思う人もいらっしゃるでしょうけれど、そんなことはありません。これはシンプルすぎて難しい問題です。
このブログと同じ内容を動画でご説明しました。お好きな方でご確認ください。
おそらく着物についてくわしくない初心者の人はもうこれ以上読む必要はありません。たぶんご理解になれるからです。
この答えに納得できないのは着物について深く知識があるユーザーさんや着付けの先生の皆さんなど、プロに近い皆さんです。とりわけ一番くわしいはずの呉服屋の人には、私が直接どれだけ説明しても理解できないケースがほとんどです。
これまで私がいろんな業界人に出あってきて、この話が最初から理解できて「そのとおり!」と言ってくれたのは職人と京友禅を作っている悉皆屋(しっかいや)だけです。
そんなわけで、なぜたったこれだけの簡単な答えで良いのか、きちんと理解されたいという方は是非読み進めてみてください。あなたが納得できないのは当然ですし、むしろこれまで真剣に着物のことを学んできた証拠だとも私は感じます。それでも最後まで読んでいただけたら、きっと何かしら得るものがあるはずです。
【訪問着と付け下げの違い】がわからなくって、いつも悩んでいます。
訪問着と付け下げの違い、悩んでいる人がものすごく多いのですが、実は簡単なんですよ!
こんな「訪問着と付け下げの違い」がユーザーを混乱させる
インターネット上に書かれている答えも間違ってはいないのですが、結局ユーザーの疑問を解決しきれていないのではないでしょうか。
世間でいう「訪問着とは?」
これらも間違いではないのですが、当たらずしも遠からずな答えは下記の通り。
▲ 着物の形(絵羽:えば)で売られている。
▲ 柄が縫い目(合い口)で繋がって、着物全体がキャンパスのように染められている
▲ 八掛(はっかけ:裾まわりの裏地)が、表地と同じ生地で、柄が染められている。
▲ 胸と衿の柄が繋がっている。
世間でいう「付け下げとは?」
これらも間違いではないのですが、当たらずしも遠からずな答えは下記の通り。
▲ 反物で売られている。
▲ 柄が縫い目(合い口)で繋がらず、飛び飛びになっている。
「訪問着は絵羽、付け下げは反物で売られている」「八掛のあるなし」はよく聞く説明ですけど、これではダメなんでしょうか?
これらの説明も完全な間違いではないのですが、これを基準にすると【必ずユーザーの皆さんが判断に迷う】と思います。
ネットの記事を読んでいても、「付け下げは縫い目で柄が繋がらない」と書いているわりには、「写真で出している付け下げは柄が繋がっている」などと矛盾を見受けます。
その点について、ご参考になる記事がこちら。
「付け下げは●●」という人が「訪問着と付け下げの実際」を絶対にわかっていない理由
訪問着と付け下げの違いをお伝えする前に。
ハンバーガーを好きな人はアメリカ人?!
ちょっと変なことを言いますが、
「ハンバーガーが好きな人は全員アメリカ人です」と言う論理はいかがでしょうか?
確かにアメリカ人にハンバーガーが好きそうなイメージはありますけど、全員ではないですよね。それに世界各国にもハンバーガー好きはいますから、ハンバーガー好きが全員アメリカ人というのは言い過ぎだと思います。
その通りです!
「ハンバーガーを食べる人=アメリカ人」ということと同様に、「八掛に柄がある=訪問着」というのは違和感があるわけです。「訪問着ならば八掛に柄がある可能性が高い」というのが本当です。
「訪問着と付け下げの違い」に悩んだ私の経験
私自身、呉服屋になりたての頃は自分でも消化しきれない問題でした。 お客様が訪問着のような柄の着物を購入しているのに、購入時点で呉服屋が「付け下げ」と呼んでいると「私の持っている着物は付け下げだわ」と思い込んでいるのです。さらには「訪問着のような付け下げ」という言葉に、お客様がどこか引け目を感じてしまっているような気さえしました。
しかし私がこうした問題を解決するため、何度も産地の職人さんを訪ねる中で、ようやくその答えにたどり着きます。
関連して是非読んでいただきたい記事がこちら。
初心者が必ず悩む【付け下げ訪問着】とは!?京ごふくのプロが解説!
また最近、人気の記事で「呉服屋」について書いたものです。ご参考まで。
呉服屋って怖くない?専門呉服屋・老舗呉服屋の雰囲気・メリットを突撃調査してみました!
【訪問着と付け下げの違い】の見分け方
訪問着、付け下げとはどんな着物か
訪問着と付け下げがどんな着物かお答えするならば、
仕立て上がった状態で
訪問着は「豪華な柄のフォーマル着物」
付け下げは「軽い柄のフォーマル着物」
となります。「軽い柄」というのは、柄が控えめ、少なめ、そこまで格調高くない、という意味です。
あの、、、こう言ってはなんですけど、呉服屋さんから「そんなことは誰でも知っているよ」と言われそうですね。
そうですね。実はこれ、詳しい人ほど「本当の意味」を理解するのが難しいんです。
もし本当にこの定義の意味を分かってくださったら、「八掛に柄がある」とか、「訪問着は絵羽で、付け下げは反物」ということを一切言ってはいけません。
訪問着と付け下げを見分ける唯一のコツ
二十八の考える訪問着と付け下げの見分け方はとても簡単です。
パッと見て、豪華ならば訪問着、軽い柄ならば付け下げと判断する
じっくり見て判断してはいけません。もちろん9割の訪問着には八掛に柄があるかも知れませんが、そこを判断基準にすると迷います。パッと見てというのが大切です。
続く2枚の写真で練習しましょう。
1枚目の着物(貝合わせ、うす黄緑)は豪華な柄なので訪問着です。
2枚目の着物(結び文[ぶみ]、卵色)は控えめな柄なので付け下げです。
こんな見分け方なら簡単ですね!私にもすぐわかります!
ただ訪問着と付け下げがどこで分かれるのか、ボーダーライン(線引き)が気になります。
訪問着と付け下げのボーダーライン
確かに訪問着と付け下げの違いのボーダーラインを言い切るのは難しいものがあります。柄の豪華さだけでなく、柄の格や染め技法によっても変化があるからです。
それでもある程度はっきりした基準があれば、皆さんの助けになると思いますので、示したいと思います。
こちらの着物(空色、貝合わせ)ぐらい柄があれば訪問着として十分お使いいただけます。これ以上の豪華さを求めるのはお好みの問題です。「あとはしっかりと豪華な袋帯を合わせる」ことの方が重要です。
訪問着と付け下げをユーザー目線で考える
訪問着と付け下げについて、ユーザーの方がどれだけ説明を聴いても理解できない理由は、説明をする呉服屋がユーザー目線ではないからです。
販売の前後で訪問着と付け下げの定義を変えるべき
呉服屋は絵羽(えば:着物の形に仮縫い)の商品を訪問着と呼び、反物を付け下げと呼んでいます。
仕立て上がった後でも、「もともと絵羽だったか反物だったか」わかるんですか?
いえ、実はプロであっても絵羽だったか反物だったか「推測」はできますが、言い切ることはできません。
(本当は見分け方もありますが、仕立て上がっているとわかりません)
だから「絵羽で売られていたか、反物で売られてたかは関係ない」ってことですね!
絵羽が全て豪華な柄、反物が全て軽い柄ならば良いのですが、その逆パターンも多々あります。加えて絵羽も反物も、染める職人・クオリティに差はありませんが、その割には絵羽と反物で価格が何倍も違うのです。そこに矛盾があります。
この矛盾を突いて、リーズナブルに訪問着を購入する方法がこちら。
参考記事:絶対に失敗しない【訪問着の購入法!】
ですからユーザーが購入して仕立て上がった時点からは、豪華なフォーマル着物を訪問着、軽めのフォーマル着物を付け下げと呼ぶべきです。
仕立て上がった状態で判断
まずご自分の着物について、購入時点で絵羽だったか反物だったかは忘れてください。それと呉服屋がどのように呼んでいたかも忘れてください。
ユーザーの方にとっては、「仕立て上がった状態で」ということが大事なポイントとなります。
例を挙げるならば、もし結婚式に招待されて「訪問着で」と言われたら、それは「豪華な着物」を求められているわけで、決して「絵羽で販売されていた着物」を求められているのではないのです。
また、茶道の先生から「付け下げで」と言われたとしたら、その先生はお茶室でお客様をお迎えするのに相応しい「ちょっと控えめな着物」を求めているわけであり、「販売される時に反物だった着物」を求めているわけではないのです。
ご自分のタンスの中に入った状態での「着物の豪華さ」を判断基準としてTPOに合うかをご検討ください。
まとめ
訪問着と付下げの違い、いかがだったでしょうか。 「いやいや、さすがに簡単すぎませんか?」という声さえ聞こえてきそうですが、真実であるほどシンプルなものです。
思った以上に簡単な見分け方でした!
でもなぜ、訪問着と付け下げの違いはややこしくなってしまったんですか?
いろんな説明はできますが、一言でいってしまえば「呉服業界の商慣習の問題」です。訪問着、付け下げは進化過程で、「大きなスマホと、小さなタブレットの違いがわかりにくくなった」ようなものです。
何より大きな問題は訪問着が圧倒的に高価だということ。付け下げなら価格が半額以下なのに、付け下げでも訪問着として使えるというのは言いにくいことです。
いずれにしても他人が着ている着物を、いちいち八掛に柄があるかないかと確認してから、「あぁ、あなたが着ているのは訪問着ね」と言うのはちょっと変な感じがしますものね。
「パッと見てわかること」が社交の場では大切だと思います。
仕立て上がった状態で
訪問着は「豪華な柄のフォーマル着物」
付け下げは「軽い柄のフォーマル着物」
ご紹介した「訪問着と付け下げの違い」を見分ける方法が、着物を愛する皆さんのご参考になれば幸いです。
【関連記事】
・「付け下げは●●」という人が「訪問着と付け下げの実際」を絶対にわかっていない理由
京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。
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