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プロに教えてもらうということ

今日は「プロに教えてもらうことの意義」について書いてみたいと思います。

プロというのは初心者やアマチュアが知らないことを深いレベルで知っていて、その楽しみを教えてくれる存在だと思います。もっと言えば、素人では良さが理解できないことでも、価値基準を教えてくれて、その良さを伝える伝道師だということです。

多趣味から無趣味へ

まずは私の昔のエピソードから。

振り返ると29歳で呉服屋になってからこれまで、趣味が何もありませんでした。

さかのぼれば、27歳ぐらいまではものすごく多趣味で、ヨット、カメラ、美術館巡り、古美術品、陶磁器、盆栽などなど情熱と時間を使って趣味にのめり込んでいました。

その趣味の一つだったのが着物ですが、着物職人さんと出会ってから着物を仕事にすることになります。そこからは趣味が完全になくなり、趣味である着物が仕事になったのです。

自転車という趣味

そんな私が40歳にして、久しぶりにちょっとした趣味ができました。

それは自転車です。

コロナでの変化もあって、普段バイクで職人さんを回っていたのですが、それを自転車に切り替えました。自転車を使えば仕事に良い運動を取り入れられるからです。ジムに行ってもマスク着用ですから、有酸素運動の爽快感は自転車で外を走る方が上だなぁと。

私はまだ自転車に興味が出てから3ヶ月ほどですが、自転車も他の趣味にもれずディープな世界がありまして、私が今、一番欲しいなと思っているのは100〜120年ほど前の自転車です。それもイギリスかフランスが第一候補でイタリア、日本の自転車が次に良いなと思っています。

バイクから自転車に切り替える時に私が探していたのはクラシックスタイルながらもピカピカの自転車。

ただ、そうした自転車を中心に扱っているお店というのはあまりなくて、私の理想とする自転車を手に入れるには「50年以上昔の自転車をレストアしてピカピカにする」というのが妥当だとわかりました。ただ、自転車を探し始めて1ヶ月の私にはちょっとハードルが高かったので、もう少しハードルの低い自転車がないかと知人の自転車屋さんに声をかけたのです。

自分が知らなかった価値観

しばらくして一台の自転車を紹介してくれました。

その自転車は30年ほど前の街乗り自転車で、しばらく誰も所有していなかったためにサビもすごく出ています。写真を送ってもらったのですが、それを見ても「これは買わないなぁ」と思っていました。何しろ私が求めていたのはクラシックスタイルでありながらピカピカに光る新品のような自転車でしたから。

まぁでもせっかく探してくれたから一度見に行こうと思って訪ねると、その自転車の見方を教えてくれました。

・この古いサビが良い感じである

・ピカピカの自転車が綺麗なのは当たり前。古くサビた自転車をピカピカにして乗ることに価値がある

・古い自転車にピカピカの現代的パーツをつけてはいけない。新しいパーツを入れるにしても雰囲気を壊さないように。

・自転車の良し悪しは色々あるけど、「ラグ」というフレームの接続部分、前輪が取り付けられている「フロントフォークの形状」がとても大切

などなどです。

実際に乗ってみると

そうしたことを教わっても、すぐには良いなと思えなかったのですが、試乗をしてみるとその自転車がものすごく速く走れたので、「これは気持ち良い!」と思ってしばらく乗ってみることにしました。

教えてもらった視点を持ってインターネットなどで自転車を見ていると「なるほど確かにこだわりがある自転車には共通点があるな」と次第に実感していきます。

快適に街中で走りながら、周囲の自転車を見ていると世の中の自転車がどれだけスピリットのこもっていない自転車かということも次第に見えてきました。また、よく通っていた道にものすごく良い自転車がとまっていたりすることにも気付けるようになりました。

自分が手に入れた自転車も完璧ではないものの、アルミパーツを磨いてピカピカに光らせると、確かに古さの中の良さがあるようにも思えます。特殊さもあるフレームなので、そこもちょっとした誇りに思えてきました。

プロに教わるということ

この経験を通して感じたことは、「最初は理解できなくても、プロが良いというものには一理あるので、その見識をまず受け入れてみることも大切だ」ということです。

私自身がまさしくこの自転車購入で経験したことですが、自分があまり良いと思わなくても、プロが言うことを聞いてみると次第にその深い価値に気付ける。さらには世の中の自転車マニアの人も共有する価値観なので、そうした交流を持てばさらに自信が持てるということです。

呉服屋として

これを私が呉服屋としての視点に置き換えると、私も「良い着物とはどんなものか」という価値観をきちんと伝えることに、遠慮する必要はないとを再認識しています。

一般的呉服屋の販売スタイル

私がこれまで見てきたベテラン販売員のスタイルに多かったのは、根拠もないのにものすごく自信たっぷりにお薦めする販売手法で、お客様が「それほど言うなら、、、」と信じてご購入につながるスタイルです。

これには呉服屋の悪いところがたっぷり詰まっていて「在庫商品をどう売るか」ということが全てだからこそ「これは一品ものです」とか「ものすごく上手い職人が作っています」など根拠もなければ、約束もできないことを言って販売しているのです。

自分を振り返って

そうした様子を見てきた私としては、お客様が好きなもの、気に入ってくださるものを最優先にしてきたので、お客様のお好みに合わせて商品を提供するということに重きを置いていました。

ただ、今回の経験を通じて省みたのは、山ほど着物を見てお誂えの着物をたくさん作ってきたプロの呉服屋である自分が、ベストだと考えている着物をしっかりアピールすることも大切だということです。

京ごふく二十八として思うこと

私自身もこれまで「糊糸目で、下絵が上手い商品がお薦めです!」とお客様には重ね重ねお伝えしてきたと思うのですが、二十八の京友禅商品はすべてこの技法で作っていますので、自分の良いと思うものをお届けできていたと思います。

ただ、現在もこれまで京友禅の歴史にもなかった手法や、忘れ去られていた生地などを活用し、現代にふさわしい新しいものづくりにチャレンジしています。

こうした商品はお好みも分かれるところですが、世の中に存在しなかった新しい価値観の提示なので、まずはしっかりプレゼンテーションすることも大切なことだなと感じています。お一人ずつのお客様へのご提案ももちろんですが、Youtubeなどでサラッとどなたでもご覧いただけることも大切な時代だとも考えます。

 

まとめ

久しぶりに自分が趣味の世界のユーザーになってみて思ったことを書きました。それでも自転車は仕事に使うものですし、仕事第一、着物に全ての時間を全力投球なのはこれからも変わりません。

加えて、自転車を探すに当たって感じた問題点は、裾野の広い自転車業界ながら、呉服屋にも通じるところがあるなと思った次第でおまけに記しておきます。

・ホームページが古く、ディープな自転車ほど情報が少ない。

・それゆえ目指すべきお店に辿りつけない。

・自転車の裾野はひろいものの、頂点の層はわずか。この頂点の趣味をわかる人は1%もいない印象。

我が身を振り返り、改善を重ねたいと思います。

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この記事を書いた人
原 巨樹 (はら なおき)
原 巨樹 (はら なおき)

京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。

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