代表ストーリー:原巨樹
なにも知らない着物初心者としてスタート
はじめまして。京ごふく二十八の代表、原巨樹(はらなおき)です。
皆さん、着物の購入で悩んだご経験はありませんか?私も今では京都でプロデュースと販売をする呉服屋ですが、25歳で初めて呉服店で着物を購入した時には、着物について何の知識も持っていませんでした。
特に着物について教えてくれる知人もない中で、呉服店での購買体験をつうじて思ったのは、
「もう少しきちんと着物のことを教えてくれれば、購入を後悔しなかったのに。。。」
ということでした。
どんな着物を買えば良いかさえわからず購入
呉服店についても知識がなかったので、ジーンズを買うぐらいのつもりで呉服店に行きました。
最初に買ったのは単衣の着物と角帯、長襦袢で、トータル23万円ぐらい。長襦袢は唯一デザインに凝ることができたので良いものを選び11万円ほどだったと思います。
ただ、もし今の私がこうした男性のお客さんの相談にのるなら、長襦袢は簡易のものにして、羽織を一枚買う方が良いとお薦めするでしょう。なぜならば男性の着物姿は羽織のあるなしで対応できるTPOが非常に幅広くなるからです。
結局、着物のしきたりや考え方などの全体像がわからなかったために、あとで使い勝手が悪いという経験をしました。
良いものは高い??
呉服店に行くと、ある訪問着は20万円、またある訪問着は100万円となっていることに対して、販売員に「これは何が違うんですか?」と質問しても、だいたい返ってくる答えは
「良いものは高いですから」
という答えにもならない言葉。
そのなぜ良いかという理由を聞いていたんですが、スッキリとした答えは得られません。
「あなたもっと太らないとダメよ!」
私は身長176cmで体重59kg。仕立て上がった着物を着ても、ちょっと胸がはだけてしまい、衿留めが必須という着こなしでした。そんな時、何軒もの購入した呉服店に相談して、私が言われたのが「あなたもっと太らないとダメよ!」という言葉。
当時はちょうどメタボという言葉が流行りはじめたころで、太らないことを推奨する時代にありながら、「着物にあわせて太れ」というアドバイスには驚きました。
つまりは呉服店側が出している寸法が間違っているわけがないので、客の体型が間違っているというとてつもない論理を展開しているわけです。
職人さんは答えを知っていた
なんでも知りたがる私にしてみれば、呉服店での購買経験は不完全燃焼です。
そこで全国の着物産地の職人さんに会ってみようと思い、いろんな地域を訪ねたのですが、職人さんは私の質問に対して非常にロジカルで納得できる答えを返してくれます。どこの産地に行ってもです。
なぜ、販売している呉服店の人は、たったこれだけの答えを持たずにあんな高価な商品を販売しているんだろうと疑問を持たずにいられませんでした。
職人さん達の苦境を知る
そんな職人さん達なのですが、どこの産地も超高齢化と後継者問題を抱えていることを知ります。
理由は簡単で生活していけるような賃金が手にできないからでした。
私が着物ユーザーとして呉服店で購入する価格は高いのに、なぜそれを作っている職人さん達の収入が少ないのか疑問に思って調べると、その原因は「呉服業界の流通構造と慣習」にありました。
複数の問屋を経由することなどにより価格が高くなっており、40年前に比べると需要が激減しているのにも関わらず業界構造に変化はなし。結局、そのしわ寄せが生産現場の職人さんたちに押し付けられていたのです。
志をもって京ごふく二十八の起業へ
私が消費者として最後に購入したのは地機の結城紬でした。少し安く購入できても50万円ほどはしたかと思います。私は車よりも着物が欲しいという性質でしたが、20代後半の若者が購入するには高価な衣類です。
それでもその結城紬が欲しくて欲しくて仕方がないので購入しました。
購入した後は休みの日はもちろん、仕事の日でも昼休みに会社から近かった自宅に帰って結城紬を着て過ごし、また会社に戻るというぐらいに生活を楽しくしてくれました。
いろんな呉服店では「こういう良いものを作る職人さんはいなくなる」と聞かされますが、そうした言葉はたんなる売り文句に成り下がっています。そんな呉服業界の現状を目のあたりにして、もし自分がどんなにお金持ちになって山ほど着物を買ったとしても、職人さんの収入増にはつながらないだろうと思いました。
戦後の沖縄では米軍の捨てた麻袋に、割れたレコードをヘラにして紅型の染めを続けたと聞きます。食べるにも困るほどの時代にそうやって先人が伝えてきた染織文化を、これだけ豊かになった日本で失ってしまうことは日本の恥だと思いました。
当時はそんな染織をとりまく現状がくやしくて、文字通り泣き暮らしていました。
私は間違いなく世界で一番呉服屋になりたい人間だったと思います。京都の出身でもなく、親はもちろん親戚一同、呉服を生業としない家に生まれましたから、老舗呉服店に生まれた人間に比べればスタート地点ははるかに後方です。
それでも、自分のように本当に着物が欲しい人間と職人さんを繋げることで新しい風を吹かせたいと、27歳の時に呉服屋として将来起業しようと決意しました。
勤めていた会社を辞め、無職で貯金もないなか、7ヶ月間の着物産地行脚をします。その後、ご縁をいただいた東京の呉服店で5年4ヶ月の勤務をしました。
京ごふく二十八が提供できること
そんな私が起業した京ごふく二十八なので、皆さまのお役に立てるだろうと思うことを3つ挙げます。
品質と価格への安心
第一に「品質と価格への安心」です。職人に直接発注して作ってもらう京ごふく二十八の京友禅は他店ではご購入になれません。品質管理も自社で行っていますから、ひとつひとつの商品がどの職人さんに、どのように作られているかについてもお伝えすることができます。
着物のしきたりやコーディネートのアドバイス
次に「着物のしきたりやコーディネート」についてです。着物を着たいと思う人にとってハードルとなるのが様々な着物ルール。
着物のルールは法律ではないですし、ルールブックもない上に、世に連れて変わる部分もあって判断はむずかしいもの。これはどんなに着物慣れした人にとっても同様です。
ですから皆様に代わって京ごふく二十八が常日頃から情報収集を重ね、お困りの時にはいつでもご相談いただけます。
着物の価値の見える化
最後に「着物に含有される価値の見える化」です。
京友禅は15〜20工程もの分業制で、多くの職人が関わって作り上げますが、それは京ごふく二十八に限らず、高価な着物の多くはそのようにして作られています。
しかし、二十八が異なるのは、作る過程を写真や解説で見えるようにすることによって、あなたの着物が作られている様子を垣間見ることができることです。
これらは私のライフワークでもある職人さんとのコミュニケーションをベースに作られた販売スタイルで、京都でも同じことができる呉服店はほぼ存在しないほどに稀有なものです。
もちろんまだ小さな呉服店ではありますが、あなたのお着物ライフを豊にするべく、より良い商品とサービスをご提供して参ります。
京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。
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