決定版!【着物の種類】は完全制覇!着物の13種類をプロが徹底解説!
「着物に挑戦したい」と思っても、種類が豊富な和服は初心者にはどれを選べば良いのか悩ましいもの。
本記事では「着物の種類や特徴」「帯の使い分け」について、たっぷり解説します。女性の着物だけではなく、男性の着物についてもご紹介するのでぜひ参考にしてください。
着物を美しく着こなすためには格の違いや着用シーンをおさえることが大事です。このコツを覚えて憧れの着物デビューをしましょう。
着物には種類別に「格」がある
着物はデザインと色、生地によって、様々な種類に分けられます。TPOに合った和装を楽しむためには、種類ごとに異なる「格」について知っておくことが非常に重要となるのです。
まずは着物の「格」を大きく4つに分け、「礼装」「準礼装」「盛装」「普段着」の違いについて詳しく解説します。
礼装・準礼装・盛装・普段着の違いは?
着物は「格」の違いに着目すると、大きく4つの種類に分けられます。具体的には、最も格式高い場面で着用される「礼装」、礼装に準ずる格式でもう少し幅広いシーンで着られる「準礼装」、ゴージャスに自分らしさを表現できる「盛装」、お出掛け着として気軽に着用できる「普段着」の4種類があります。続いて、それぞれの特徴や、代表的な着物をご紹介します。
【礼装】
礼装は第一礼装とも呼ばれ、最も格式が高い着物。結婚式で着用する打掛は花嫁だけが着用する礼装であり、黒留袖・色留袖・本振袖は慶事の礼装です。喪服は弔事の礼装。結婚式で親族が黒留袖を着用するのは、一般的に「結婚式が第一礼装を装う最高の儀式」であるからと言えるでしょう。
【準礼装】
準礼装と呼ばれる略式礼装は、礼装に次ぐ格の高さを持つ着物。フォーマルな場で幅広く着用できます。訪問着や付け下げ、紋付の色無地も準礼装です。
【盛装】
礼装・準礼装が冠婚葬祭や公の行事で着用されるのに対し、パーティなど華やかに装うことを目的とした装いが盛装です。近年主流となっている「紋を付けない訪問着」などは盛装の代表例でしょう。またTPOによっては、華やかな小紋に袋帯を合わせた装いも盛装に分類されます。
【普段着】
気軽なお出掛け着となる着物を普段着といいます。小紋をはじめ、お召しや紬などが普段着に分類され、フォーマルな場所への着用は好ましくありません。
フォーマルな着物の種類と特徴
着物が、その種類によって明確に格分けされているかと言うと、そんなこともありません。
実は、着物の格はコーディネートする帯や、紋の数によっても変化します。例えば準礼装とされる色無地は紋なし、1つ紋、3つ紋、5つ紋とすることで格の高さが普段着から礼装まで変化させられます。またカジュアルシーンで活用されることが多い小紋の着物も、1つ紋を付け、調和する豪華な袋帯を合わせれば盛装の装いとできる場合もあるのです。
続いてはフォーマルシーンで着用できる着物の種類と特徴を解説します。
着物の種類1.白無垢(しろむく)・色打掛(いろうちかけ)
【特徴】
白無垢は打掛(うちかけ)や掛下(かけした)、小物まで白で統一したスタイル。色打掛はその名の通り打掛や小物に鮮やかな色が使われた装いで、華やかさを特徴とし披露宴などでお色直しにもよく使われます。どちらも鶴や鳳凰など縁起の良い柄が意匠として選ばれています。白無垢は厳粛な感じが演出できますし、色打掛は華やかさが演出できるという点が大きな違いと言えるでしょう。
【利用できるシーン】
・自身の結婚式
【おすすめの帯】
・掛下帯(かけしたおび):打掛の下に使われる専用の帯
着物の種類2.黒留袖(くろとめそで)
【特徴】
既婚女性の第一礼装であり、最も格の高い着物です。着物の上半身に柄はなく、裾まわりに格調高い吉祥文様を豪華に染めています。「染め抜きの五つ日向(ひなた)紋」「白の比翼仕立て」という2点が決まり事です。制作時点で想定年齢があって作られており、色柄によって若向き、年配向きと分かれます。第一礼装である黒留袖の着用時は、帯や帯締めなどの小物も、留袖に相応しいものを選びましょう。
【利用できるシーン】
・新郎新婦の母親や祖母として参加
・関西などでは親族として結婚式に参加する場合も着用
【おすすめの帯】
金、銀、白などをベースとして、豪華な吉祥文様が織り上げられた「袋帯」がベスト。昔は「丸帯」もあったが、近年はあまり制作されていない。
着物の種類3.色留袖(いろとめそで)
【特徴】
色留袖は、黒留袖と同じような裾模様で、地色は黒以外の色で染められた着物。五つ紋が付いていれば黒留袖と同格。主に既婚女性が礼装として着用します。一般的に紋は三つ紋か五つ紋が多いですが、控えめな柄の場合は一つ紋にすることも可能です。さきほどご紹介したように黒留袖は着用シーンが限られますが、三つ紋以下の色留袖は招待された結婚式などにも着用でき、黒留袖よりは幅広いシーンで着用できます。関東では新郎新婦の親族もよく着用します。皇室において黒は喪の色とされているので、叙勲は色留袖となります。
【利用できるシーン】
・結婚式
・勲章(叙勲)、文化勲章、褒賞の伝達式
・祝賀会
【おすすめの帯】
金、銀、白地で織られた豪華な「袋帯」を基本とし、地色は金銀白以外であっても構いません。色留袖の地色、柄と調和したものを選びます。
着物の種類4.振袖
【特徴】
未婚女性の第一礼装とされ、袖の長さによって「本振袖」「中振袖」「小振袖」に分類されます。以前は中振袖がメインでしたが生産側の理由で、現在は本振袖が主流。本来は紋が付いてしかるべきですが、慣習的に紋は付けていません。「袖を切ったら訪問着になる」との意見もありますが、振袖は華やかで若々しい柄が描かれているので、訪問着としての利用は難しいことが多いのです。最近は若いミセス(既婚者)も振袖を着用する場合があります。
【利用できるシーン】
・成人式
・未婚女性であれば、招待された結婚式・披露宴
・自身の結婚式
【おすすめの帯】
振袖用に織られた格の高い「丸帯」「袋帯」を締めます。成人式やパーティなど、晴れの舞台では結び方をアレンジして若々しさを演出するのが素敵です。
着物の種類5.訪問着
【特徴】
訪問着とは、上半身から裾までを1枚のキャンパスに見立てて、豪華な柄が染められた着物のことです。留袖同様に「絵羽(えば)付け模様」と呼ばれ、縫い目で柄が繋がるように染められます。
訪問着と一口に言っても、柄の格調高さや量によって着用シーンは様々です。控えめな訪問着に一つ紋を付けて準礼装とすることもあれば、豪華な柄の訪問着でも紋を付けず盛装とすることもあります。
【利用できるシーン】
・結婚式など冠婚祭
・パーティー
・茶道のお茶事
【おすすめの帯】
留袖に合わせるような豪華な「袋帯」から、金銀糸を使っていない唐織の「袋帯」まで。訪問着の雰囲気に合わせた格の袋帯を締めることが大切。
着物の種類6.付け下げ
【特徴】
付け下げとは、フォーマル着物のなかでも控えめな柄付けの着物を指します。訪問着の絵羽付けを簡略化してあり、準礼装であっても控えめに装いたいシーンに相応しい着物です。帯や小物との組み合わせ次第で格を自由に変化させられるので、最も幅広く活用できます。
【利用できるシーン】
・茶道のお茶事
・入学式や卒業式への付き添い
・七五三などの付き添い
【おすすめの帯】
「袋帯」から「名古屋帯」まで合わせられます。ただし付け下げ着物の雰囲気、格調に合わせることが必須です。帯や小物によって格調高くも仕上がりますし、控えめな付け下げであれば染めの名古屋帯でも構いません。綴れの八寸名古屋帯(袋名古屋帯)なども。
着物の種類7.色無地
【特徴】
柄が入っていない染めの着物。一般的には一つ紋が主流ですが、三つ紋や五つ紋も付けられます。また付け下げ同様に、合わせる帯や小物次第で格が変化します。ただ、三つ紋でさえ付けるのは茶道の先生など少数派であり、一般的な人は一つ紋で十分です。
【利用できるシーン】
・お茶事
・入学式・卒業式の付き添い
・七五三などの付き添い
【おすすめの帯】
・袋帯
・名古屋帯:織りの帯を合わせることが多いですが、染め帯でも構いません。
・綴れの八寸名古屋帯(袋名古屋帯)
着物の種類8.喪服
【特徴】
喪服と言えば黒喪服が基本ですが、色喪服(準喪服)もあります。黒地に五つ紋が付いているのが黒喪服で「関東では羽二重」「関西ではちりめん」が使用されます。しかし羽二重はやや光沢感があるため、葬儀にはちりめんの方がマッチしているとの考えから、近年ではちりめんを使用する方が増えています。
参列者が黒の喪服を着用することはTPOとして間違っていないのですが、近年、喪主でも着物の喪服を着用するケースは少なく、参列者が着物を着用することは目立つ場合があるので注意しましょう。
当然ながら喪服着用時は喪服専用の帯、小物を身につけましょう。同様に洋服と同じくヘアスタイルやネイルカラーにも注意が必要です。
【利用できるシーン】
・葬儀
・法事
・偲ぶ会
※ただし、喪主や故人の意思を尊重できる装いを念頭に置いて慎重に選んでください。
【おすすめの帯】
・黒共帯
カジュアルな着物の種類と特徴
これまでフォーマルシーンで着用する着物を8種類ご紹介しました。礼装、準礼装の中でも、帯や小物合わせによって格式が変化するので、着用シーンに合わせてスマートに着こなしたいものです。
では、次にカジュアルシーンで着用する着物の種類と特徴を解説していきます。冠婚葬祭などの改まったシーンに普段着の着物を着て行くのは当然良くないですが、逆も然り。カジュアルな場にかしこかまった着物を着て行くのも考えものです。
周囲との調和がとれたコーディネートを心掛けましょう。
着物の種類9.江戸小紋
【特徴】
江戸小紋は、型染めの小紋のなかで最も格が高い染め技法。カジュアルシーンでの着用ももちろんですが、江戸小紋三役である「鮫」「行儀」「通し」であれば紋付きとして着られます。東京エリアでは色無地に準ずる着物として茶道などで着用されることが多いようです。江戸小紋であっても柄が大きくなれば、カジュアルなイメージが強まります。
江戸小紋はそもそも裃に使用されていたこともあって、特に三役は格の高い柄として認識されますが、あくまでも「小紋=カジュアルな場での着用」と考えている人も一定数存在するため、初心者のうちはフォーマルシーンには控えめにしておくと失敗がありません。地域や人によって考え方は異なるでしょうが、冠婚葬祭などの改まった場所には来ていかない方が無難です。
それでも活用範囲は非常にひろく、一枚あるととても使い勝手が良い着物であることは間違いないでしょう。
【利用できるシーン】
・お稽古
・お出掛け着
【おすすめの帯】
・袋帯
・名古屋帯
・綴れの八寸名古屋帯(袋名古屋帯)
着物の種類10.小紋
【特徴】
「小紋」という言葉には複数の意味があるので注意しましょう。江戸時代以降「型染めによる小さな柄=小紋」とであり、それは現代でも間違っていないのですが、現在は「型染め全般」を指して「小紋」と呼ぶようになりました。よって、現代では大きな柄であっても型染めであれば小紋と総称されています。
小紋染めは型を使用するので、30〜100cmぐらいを1単位として、約13m(1反)を同じ柄が繰り返すパターンで染められています。つまり着物としての仕立て上りにおける「柄の上下(天地)」や「縫い目の柄の繋がり」は考慮されていないため、仕立て上がっても絵羽着物(訪問着や付け下げなど)のように、1枚の絵にはなりません。
カジュアルシーンでの使用を中心ですが、細かい柄や飛び柄の小紋は少しフォーマルな印象にもなります。大きな柄や華やかな柄の場合は盛装としての着用もできるでしょう。
【利用シーン】
・お稽古
・お茶会
・お出掛け着
【おすすめの帯】
・名古屋帯
・八寸名古屋帯(袋名古屋帯)
・袋帯
・しゃれ袋帯
着物の種類11.付け下げ小紋
【特徴】
「小紋」が「同じ柄パターンの繰り返し」であるのに対し、「付け下げ小紋」は何枚もの型を使うことで「袖や身頃に天地のある柄付けで染めている」のです。飛び柄の付け下げ小紋は、ごく控えめな付け下げとほとんど見分けがつかない場合も多いのですが、「柄の格調高さ」で格は決まります。この「付け下げ小紋」の「小紋」とは、型染めの意味と共に「カジュアル寄りの意味も含む」と言えるでしょう。なぜならばフォーマルな訪問着や付け下げにも型染めはたくさんあるものの、それらを訪問着小紋、付け下げ小紋とは呼ばないからです。
【利用できるシーン】
・お稽古
・観劇
・友人との食事
・カジュアルなパーティーや軽いお茶会など
【おすすめの帯】
・袋帯
・名古屋帯
・八寸名古屋帯(袋名古屋帯)
着物の種類12.紬(つむぎ)・木綿
【特徴】
紬は屑糸などを使って節のある糸を布に織り上げたのがルーツ。農家が自家用に作っていた経緯もあるので、木綿の着物同様にカジュアルな装いとされています。格子・太い縞・井桁などの柄は特にカジュアル感が出ますが、近年、人気が高い無地の紬は比較すると幅広いシーンで着用されています。また着物作家さんが作る黄八丈などは、光沢感のある生地ゆえに「ドレッシーな着物」として認識されることもしばしば。紬でありながら、ワンピース感覚で着られる機会も増えました。
しかし呉服業界における「紬=最もカジュアルな着物」という見解は今も変わりません。仮に素材にこだわった高級品であったとしても、紬を冠婚葬祭やお茶会などの場所へ着用するのは避けるのが無難です。少しチャレンジングな着用をする場合は、指摘されるリスクも心の片隅に置いておきましょう。それでも紬や木綿が魅力的であることは間違いないので、お好きな方は存分に楽しでもらいたいと思う着物です。
【利用できるシーン】
・お稽古
・ご友人とのお食事会
・ショッピングなど
【おすすめの帯】
・名古屋帯
・しゃれ袋帯
・カジュアルな八寸名古屋帯
着物の種類13.浴衣
【特徴】
「浴衣」とは元々「湯帷子(ゆかたびら)」であり、江戸時代には湯上りに着ていたリラックスウェア。それゆえ本来は外出着でさえなく、夏祭りや花火大会でポピュラーになった今でも、最もカジュアルな着物の一種です。
近年、銀座などで浴衣イベントが開かれるなど外出着としても認知されつつある浴衣ですが、「素足に下駄」という浴衣のスタイルは、感覚的に「Tシャツ・短パン・ビーサン」と変わりません。フォーマルな場所はもちろん、観劇やホテルなどの場所にもあまり向かないので気を付けましょう。
ただし素材に絹を使用した浴衣などもあって、お太鼓の帯や足袋、草履を合わせる着こなしも可能です。そうした場合は浴衣であっても紬の着物と同じような格と考えて構いません。
【利用できるシーン】
・夏祭り
・花火大会
・自宅やご近所でのリラックスウェア
【おすすめの帯】
・半幅帯
・八寸名古屋帯(博多献上柄など)
着物に合わせる帯の6つの種類と特徴
カジュアル・フォーマルのシーン別に、着物の特徴とおすすめの帯をご紹介しました。「留袖には豪華な袋帯」「小紋には名古屋帯」などと説明してきましたが、そもそも帯にはどのような種類があるのでしょうか。
次は、着物に合わせる帯の種類と特徴をじっくり解説していきます。大きくは「織りと染め」という技法の違い、そしてどのような素材で、どんな色柄を表現したかによって、着物同様に帯にも格があるのです。帯の種類と最適な組み合わせをマスターできれば、着物を着こなす幅が広がります。
帯の種類1.格式が高い「丸帯」
フォーマルシーンで使うことができる「丸帯」。広幅生地を二つ折にして仕立てているため、裏地も表地と同様の豪華さを誇ります。ただそれだけに重さのある帯であり、元々は歴史の長い帯地ながら、残念ながら現在ではほとんど作られなくなっています。
現代では花嫁衣裳以外は稀ですが、振袖用の丸帯などはわずかに販売されています。お手持ちの丸帯は、袋帯と同じように色柄の表現によって留袖、訪問着などともコーディネートできます。
帯の種類2.格式が高い「袋帯」
「袋帯」は文字通り、表地に裏地を縫い付けて袋のようになっているのが特徴です。袋帯の中には「本袋(ほんぶくろ)」と呼ばれ、表地と裏地が最初から袋状に織り上げられているものもあります。
袋帯は丸帯を簡略化したのが起源ですが、製造コストの安さや重量の軽さから圧倒的な支持を得て、丸帯に代わる存在となりました。それゆえ現代のフォーマルシーンでは、ほぼ袋帯が使われています。昔は1丈1尺(4m16.7cm)が一般的でしたが、現在はもう少し長い袋帯が主流となっています。二重太鼓で結ぶのを基本としつつ、着用シーンや年齢によっては華やかな飾り結びもできます。
帯の種類3.紬や小紋などに合わせる「しゃれ袋帯」
袋帯は「形状と長さ」が定義であり、フォーマルな袋帯だけでなく、「しゃれ袋(ぶくろ)」と呼ばれるカジュアルな袋帯もあります。カジュアルな袋帯は紬などでも上等な本場結城紬や大島紬、その他、紬地に染めた訪問着などにコーディネートされます。
上等なカジュアル着物にコーディネートすることが多いしゃれ袋帯ですが、別に上等なカジュアル着物に名古屋帯を合わせても良いのです。ただ、名古屋帯だと着物と金額的に釣り合わないから、呉服業界が高価格化を狙って開発したのがしゃれ袋帯だと私は考えています。
帯の種類4.格が幅広い「名古屋帯」
「名古屋帯」は九寸名古屋帯とも呼ばれ、諸説ありますが、大正時代に考案されました。帯芯を入れ、お太鼓幅は約31cm、胴に巻く半幅部分は約16cmで仕立て上げます。 名古屋帯も形状の名称であり、「染め・織り」の技法、色柄の雰囲気によって格は千差万別です。吉祥文様や有職柄で格調高く織り上げていれば、付け下げや軽めの訪問着にも合わせられます。
1.フォーマルな織り名古屋帯
織りの場合はフォーマル・カジュアルどちらもあり、染めの場合は基本的にカジュアルな用途だと考えてください。金糸・銀糸・金箔が使用された格調高い名古屋帯は、フォーマルな袋帯に準ずる使い方が可能です。小紋・色無地・付け下げと組み合わせた着こなしもできるので覚えておいてください。
2.少しカジュアル感のある織り名古屋帯
幅広いシーンで使える名古屋帯は、非常に使い勝手の良い帯なのです。
3.カジュアルな染め名古屋帯
帯の種類5.格が幅広い「袋名古屋帯」
「袋名古屋帯」は別名「八寸名古屋帯」、略して「八寸」とも呼ばれ、大正時代に考案されました。垂れの部分で生地を折り、端をかがるだけの仕立てなので「かがり帯」とも呼ばれます。名古屋帯が九寸幅で織られているのを仕立てで八寸に仕上げるのに対し、袋名古屋帯は最初から八寸に織り上げられているのが特徴です。仕立ては例外はあるものの基本的に帯芯を入れません。
「綴れ織り」の袋名古屋帯は、準礼装として色無地や付け下げに大変よく合うものです。紬のような風合いで織られた「すくい織り」はカジュアルな雰囲気なので、紬の着物などがよく合います。
袋名古屋帯は、生地風を含めて締めやすい品物が多いのも特徴の1つと言えるでしょう。
帯の種類6.カジュアルシーンで使う「半幅帯」
小紋・紬・浴衣などに合わせて使う「半幅帯」は、カジュアルシーンで気軽に使える帯です。半幅帯はその名の通り、通常の帯地の半分の幅で仕上がっています。献上柄に代表される博多織の半幅帯は特に浴衣には定番の帯です。
その昔、使用人を使うような家の奥様は半幅帯は用いず、必ずお太鼓結びをしていたと聞いたことがあります。ただ、時代も変わり、そうした昔の常識を守る必要はなく、半幅帯は新しい楽しみをもたらす帯になったと思います。半幅帯は結び方の自由度も高いので、自分好みに結び方をアレンジするのもおすすめです。
帯の種類7.花嫁衣装や子供の着物に「抱え帯・しごき帯」
あまり聞きなれない帯の名前かもしれませんが、「抱え帯」や「しごき帯」も帯の一種です。
抱え帯は結婚式などで花嫁さんの白無垢や色打掛の時に用いられます。引き摺りの振袖を花嫁衣装に着用する時には「しごき帯」も使われますし、七五三の7才女児の着物には「しごき帯」が使われます。
男性の着物の種類と帯
ここまで女性の着物・帯の種類によって解説しましたが、最後に男性の着物の種類と帯についてもチェックしましょう。
女性の着物というのはTPOにとどまらず、着用者の年齢や未既婚によって着用する着物が変わります。それに対して男性の着物は種類も少なく、数パターンの種類で幅広いTPOをカバーしつつ、年齢による区別もあまりないため、20代で揃えた着物を80代になっても着用できるというのは大きなメリットです。近年、人気が出てきている男性の着物や帯も知識としておさえておきましょう。
フォーマルな「黒羽二重五つ紋付」「色紋付」
ノーベル賞授賞式の本庶教授
男性の第一礼装は「黒紋付(くろもんつき)」とされていて、羽二重(はぶたえ)というごく滑らかな生地に五つ紋(いつつもん)を染め抜いたもので、年齢による変化はありません。着物に羽織と袴が基本形で、綴れの帯、雪駄(せった)、籠打ちなど白い羽織紐、白扇(はくせん)などを合わせます。礼装ですから、さきほどご紹介した女性の黒留袖と同様に、背中・両袖・両胸元の5か所に男性用の大きめな紋が付いています。結婚式や披露宴で新郎が着用しているのを見掛けることが多いでしょう。
「色紋付」は黒紋付に次ぐ略礼装と格付けされており、紋の付け方によって格が変わります。女性が着用する色留袖とほぼ同様の扱いです。女性の着物のように華やかな絵柄は描かれていませんが、白・ネイビー・グレーなどの色から選べます。通常は羽二重に染めますが、少し生地を変えてもおしゃれなものです。
ダークスーツ感覚の「お召一つ紋付」
男性着物の中で京ごふく 二十八が最もお薦めしたいのが、「一つ紋付のお召し着物」です。わかりやすく言えばダークスーツ感覚なので、お召しの着物を一着持っているだけで、結婚式の参列・ビジネスシーンでの会合・パーティーや食事会、茶道のお茶事まですべてカバーできます。結婚式やお茶事に出席する場合には袴を着けると良いでしょう。
なお、茶道で着用する袴はわずかに仕立て方が異なります。パーティシーンでの着用が多いか、茶道での着用が多いかでご判断ください。
紋なしの羽織であれば日常的に着用しているスーツ感覚で使えるので、レストランでのお食事やお出掛け着としても良いでしょう。男性の着物は女性のように年齢で着る色が変わることもほぼありませんし、フォーマルからカジュアルまで対応できるお召一つ紋付は是非持っておいてほしい便利な着物です。
カジュアルな「紬」
もっとカジュアルシーンで着こなしたい方には、「紬の着物」がおすすめです。着物と羽織を同じ色で着ていると普段着のイメージが強い紬の着物ですが、羽織と着物を同色系の濃淡にすることでスタイリッシュな着物スタイルに仕上がります。紬の着物は洋服でいうところの「ツイードジャケット・スタイル」だと思ってください。
羽織を脱ぐとスーツでジャケットを脱いだ状態と同じなので、よりカジュアルな雰囲気になりますが、上手に和服を着こなしている粋っぽさも出ます。「着流し」と呼ばれるスタイルでカッコ良く着られたら男前度はアップします。
男性の帯は「角帯」「兵児帯」の2種類が一般的
男性の帯は「角帯」と「兵児帯」の2種類がポピュラーなタイプです。最も格が高く冠婚葬祭向きなのは「綴れの角帯」で、第一礼装の黒紋付や準礼装の色紋付に合わせられます。着物から浴衣まで幅広く合わせられるのが献上柄の博多角帯。その他、西陣で織られている柄物の角帯にもおしゃれな物がたくさんあり、配色・柄・素材感によって格を使い分けます。
兵児帯は角帯と比較して、カジュアルなシーンで着用される帯。兵児帯を着用する際は結び方をスッキリみせると、着こなしもスマートに格好良くなります。
着物はTPOに合わせて種類を使い分けしよう
素材や色、柄によって格や着用できるシーンが異なる着物。一見難しい印象がありますが、今回ご紹介したようにひとつひとつ見ていくと次第に理解できるようになって来ます。
着物の種類や帯とのコーディネート法を知り、とにかく着用の場数を踏むことが洗練するための第一歩。「今年こそ着物にチャレンジしたい!」「特別な場所に着物で出かけたい」と思っている方は、ぜひ本記事を参考にTPOに合う和服コーディネートを楽しんでみてください。
京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。
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