着物が初めてでも買う前に知っておきたい11ポイント
着物にご興味をお持ちのあなたは、きっと何かしら大切なシーンでお着物を着こなしたいと思われていることでしょう。訪問着や付け下げのご購入も検討されているかもしれません。
ただ、あなたもご存知のとおり、着物の世界には色々なしきたりがあるので、それをまったく知らずに着てしまうと恥をかく可能性もあります。
せっかく思いきって着物を着るのに、そうしたしきたりを知らずに恥をかくことは避けたいですよね。
そこでこのページでは、あなたにまず知っておいて頂きたい着物の基礎的なポイントをお伝えします。
とくに訪問着、付け下げを着こなす場合は、カジュアルな紬(つむぎ)や小紋に比べるとよりしきたりを大切にしなければなりません。
これから二十八とご一緒に抑えるべき項目をご確認頂ければ、まずは第一ステップ完了です。
なお、こちらの関連記事もご覧いただくと、初めての方にとっては有益な情報になるかと思います。
初心者でもこれだけは押さえておきたい!!【訪問着、値段の相場】
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1.TPO
着物は定型ですが、柄付け(デザイン)や作り方によって格が変わります。それと同時に着用シーンのTPOによって選ぶ着物も変わりますので、その点をまずは抑えましょう。下に、概ね格の高い着物から順番に列挙します。
- 留袖:既婚女性の第一礼装。黒地で裾周りにだけ豪華な柄を染めたもの。5ツ紋
- 色留袖:黒以外の様々な色で、裾周りだけの豪華な柄。1、3、5ツ紋
- 振袖:未婚女性の第一礼装。
- 訪問着:全体に豪華な柄がある社交着(盛装、準礼装)。
- 付け下げ訪問着:訪問着に準ずるフォーマルな柄行きの着物。
- 付け下げ:フォーマルな着物の中で最も控えめな柄の着物。
- 色無地:名前の通り、柄のない染めの着物で、紋を入れることで控えめながらフォーマルな装いとなる。
- 小紋:型染め着物の総称。小さな柄の型染めが本来の小紋だが、最近ではカジュアルな染物を全般に小紋とも呼んでいる。
- お召し:糸を染めて作る織物で、上等な普段着。
- 紬:普段着の着物。紡ぎ糸という節のある糸が使われたザックリした織物。
例えば、ご着用シーンとして、結婚式のお呼ばれでしたら色留袖や訪問着。お子様の七五三などでしたら付け下げや色無地などがよいでしょう。
ただ、一概に言い切れるものではなく、主催者のご意向、ご一緒に参加される方の装いに合わせることが大切です。
2.ご年齢
カジュアルな着物、特に紬などはあまり年齢を想定して制作することは少ないですが、留袖、訪問着、付け下げなどの着物はご着用になる方の年代を、30~40代、40~50代などと概ね想定して染めています。いわゆる地味、派手というものです。
このように書くと重大なポイントと思われるかも知れませんが、お手持ちのお着物をお召しになる場合はそんなに気にされる必要もありません。あまり地味派手を気にされるよりも、積極的にお召しくださればと思います。
逆に、もし新しい品物をご購入される場合には、少し現在のご年齢よりも落ち着いた色柄をお選びになれば長くご着用することが可能です。
また近年は、そこからさらに一歩進んで、「お似合いになること」や「個性」、「お好み」などが重視され、一概に年齢だけでの地味派手は言わなくなって来ました。私もそうあるべきと思いますし、これからは時代の洗練を感じる色を染め出すことが重要です。
ご年齢に対する着物の色柄を、専門呉服店はすごく気にする傾向にありますし、新しい呉服店はあまり気にしない傾向にあります。そうした意見を参考にしつつ、ご自身の感覚を信じることが大切だなと思います。
3.帯合わせ
意外と盲点で、あまり知られていないのが、この帯合わせです。着物の種類にもよるのですが、帯合わせによって先に挙げた「TPO」と「ご年齢」を変化させることが可能です。
着物としては特に訪問着、付け下げ訪問着、付け下げ、色無地、小紋などにおいて、帯合わせによるTPOとご年齢の変化が大きいものです。
まずTPOについて。ある程度の柄がある訪問着であれば、金銀の豪華な帯を合わせれば十分な盛装として使えますし、金銀があまり使われていないような帯を合わせれば少し控えめな装いとなります。
つまり、訪問着は少し控えめの格を選べば、複数の帯によって格を変化させて様々なシチュエーションでお召しになれるのです。
また、ご年齢についてですが、現在のご年齢よりも少し落ち着いたお着物にしておけば、しばらくは帯を華やかな帯を締めて、先々は少し落ち着いた帯にされることで、ご年齢に合わせて長期間ふさわしいお着物としてご着用でき、最も経済的と言えるでしょう。
ただし、それだけが正解というわけでは無く、複数のお着物をTPO、ご年齢に合わせてご用意されるのも一つの手段です。ご自身のお着物ライフスタイルに合わせたご選択が重要です。
4.家紋
家紋は入れる数と、紋を表現する技法、デザインの変化によって格が上下します。
- 数:0(無し)、1、3、5個
- 紋を入れる技法:抜き紋(染めで表した紋)、縫い紋(刺繍で表した紋)
- 日向紋と陰紋:日向紋(面で表す)、陰紋(輪郭線で表す)
- 丸の有無:丸があると仰々しく、丸なしならば少し優しく女性らしくなる。
- 覗き紋:仰々しくならないように小さくアレンジ
- 女紋:女性に限り、ご実家の家紋を引き継いだり、実母の家紋を引き継ぐ女紋(おんなもん)という慣習があります。比較的、関西以西で多い風習です。関東の方は嫁ぎ先の家紋を入れられる場合が多くなっています。ご自身のお好みで、自由にお選び頂くことも可能です。
家紋についてはなるべくご家族皆様でお話し合いになって、全員が納得できる家紋選びをされてください。
5.季節
着物と帯には、それぞれにふさわしい季節があります。その区分は「仕立て方」と「生地」を基本に判断されます。
近年では気温の上昇を考慮して、更衣(ころもがえ)の時期は緩和の傾向にありますが、更衣の基本的ルールを知っておくことで、着用日当日の気候などに合わせて柔軟にお着物を選べるなど、安心できるご着用に繋がります。
- 袷(あわせ):表地に裏地を合わせた仕立て、透けない生地 1~5月、10~12月
- 単衣(ひとえ):表地だけの仕立て、あまり透けない生地でサラッとした風合い 6月、9月
- 薄物(うすもの):表地だけの仕立て、透ける生地 7月、8月
また、少し難しいことに、着物の季節と、帯、小物の季節が少しずつずれているので、その点は個別にご質問ください。
現時点では「着物には季節がある」ということだけ覚えておいてください。
6.染めと織り
染めと織りの違い
かなりむずかしい話だと思いますので、この点は呉服店で確認するのがおすすめです。
この項目は詳しくなりたい方のために記しておきます。
- 染め:真っ白な生地を染めて色柄を表した品物。キャンパスに絵を描くのと似ている。
- 織り:先に糸の状態で色を染めてから織り上げる。柄を表現するためには大きく二つの方法があり、一つ目は、一本の糸をいくつかの色に染め分けて織る、絣(かすり)技法。二つ目は西陣織、博多織に代表される技法で、複数の色糸を使いデジタルカメラのように座標軸にドットのように、特定の色糸が表面に来るよう糸を上げ下げして織り上げる紋織(もんおり)技法。
染めと織りによるフォーマル・カジュアルの違い
- フォーマルな着物:【染め】(留袖、振袖、訪問着、色無地など)
- フォーマルな帯:【織り】(錦織、唐織、綴れ織など。ただしカジュアルな織りの帯もある)
- カジュアルな着物:【染め】(小紋)・【織り】(お召、紬)
- カジュアルな帯:【染め】(染め帯)・【織り】(紬、すくい織など)
以上がスタンダードな考え方ですが、例外もあるので一つずつの商品について判断しましょう。
7.ご寸法(サイズ)
主にご身長、裄、腰回りのご寸法を採寸し、細部は仕立て職人と相談して決めます。もし、ご着用されているお手持ちの着物がおありの場合は、そちらのご寸法を参考合わせてお仕立てされてください。特に重要なのが長襦袢との兼ね合いです。長襦袢の袖丈、肩幅などが合っていないと、袖の振りから長襦袢が出てしまいカッコ良く着こなせません。
他にももし何かご希望があれば、呉服店や仕立職人にしっかりお話してみてください。実際にお着物を着た姿や、着た時のお写真などがあればよく伝わります。
通常の訪問着、付け下げでは標準寸法で染め上がった商品を、お客様のサイズに合わせて仕立てる形式なので、サイズを優先するか、合い口(縫い目)での柄合わせを優先するかが難しいところです。
8.ガード加工
ガード加工とは、小雨や少しの水ぐらいであれば弾いてくれる撥水(はっすい)ガード加工のことです。
着物や帯にガード加工を施しておけば、ちょっとした雨などに遭遇しても、シミができるリスクを軽減してくれます。ただし強く雨が降る場合や、60℃以上の液体(例えば熱いコーヒーなど)に対しては効果が無くなるのでご注意ください。
なお、この加工は生地に樹脂を定着させる加工であり、わずかながら硬くなるという風合いの変化がありますので、風合いを大切にしている本場結城紬や一部の織物作家さんによって作られたお品物にはあまりお薦めしません。
ガード加工は仕立てへの影響もゼロではありませんが、京友禅のお着物の場合にお好みでお選び頂いて良いかといます。
ご着用頻度や経年数によって、加工が弱まって来るなど、撥水ガード加工には一長一短があります。
ご不明点につきましては呉服店で相談されるのが良いかと思います。メリット・デメリットがあるので、どちらが正しいというのはありませんが、薄い地色のお着物で、まだ着物初心者の方であれば撥水加工をしておいても良いかと思います。
9.必要なアイテム
着物をご着用になる場合、着物と帯以外にも各種必要なアイテムがありますので、ご確認ください。お手持ちの品物をご活用になっても、小物を含めまして新たにご注文頂いても大丈夫です。
着物・帯・長襦袢・帯締め・帯揚げ・草履・バッグ
肌襦袢・裾除け・腰紐(3本)・伊達締め(2本)・衿芯・帯板・帯枕・足袋
※なお、着付けの方法などによって必要な小物は変わります。着付けを頼まれる場合はそのお店、着付けを習う場合は先生の指示にそうようにしてください。
10.ご予算に合わせて
1.お手持ちの品物を生かす。
職人が手掛けた手仕事の着物や帯というのは、できる限りリーズナブルにご提供したとしても、決してお安いお買い物ではありません。
本当に必要なアイテムを検討することで、トータルのコストを下げることも可能です。長襦袢や草履はお手持ちを使うなど、お手持ちの品々と合わせて、ご遠慮なくご相談ください。
2.買わないという選択肢
お着物がお好きな皆様にとって、新しい品物をお買い求めになることは大きな喜びと思います。
ただ、せっかくお買い上げ頂くのならば、長く手元に置いて愛し続けられるお品物をお求め頂きたいと願います。
振袖などでしたら、ご購入されるよりもお母様の振袖を仕立て直すなどされた方が、プロから見てもずっと良いお品物を楽しめる場合が多々見受けられます。
ですから、京ごふく二十八では、お客様がお求めになりたいというお気持ちは大切にしながらも、お手持ちのお着物などとの兼ね合いで、「買わないという選択肢」も大切なことと思います。
11.洋服は流行で、着物は品質で選ぶ
現代は物を持たない時代とされています。
そんな時代にあって、お着物を買おうというあなたは、「価値ある着物がほしい」、そして「人生を価値ある着物姿で彩りたい」と思っていることでしょう。
そんなあなたに、もしお洋服とお着物のお買い物の仕方で区別をお伝えするならば、
・洋服は品質よりも流行を楽しむ。
・着物は一瞬の流行よりも品質を優先する。
これは上質な着物をたくさん持っているお客様に教えて頂いた言葉です。着物は何十年と手もとに置いておきますから、流行よりも審美眼にたえられる品質が望ましいです。
人によってはお着物をただ眺めて楽しむという方もいるぐらいです。品質が伴わなければあなたの眼を満足させ続けることはできません。
そんな皆様にお薦めしたいのは、やはり熟練の職人が手を掛けて作り出した本物です。手描き友禅の中でいえば、糊糸目(もち米)で作られた品物は、出汁の効いたお料理のように滋味深さを楽しめるものと私は思います。
糊糸目を知っている職人たちも口を揃えて同じように話します。
お着物に初めて親しむ方が商品の目利きをして、その細やかな差異を感じるのは確かに難しいものがありますが、将来、たくさんの品物をご覧になった後で「最初の頃は何故あんな着物を買ってしまったんだろう」と思われないよう、お客様の代わりにきちんと目利きをするのが呉服店です。
時々、お母様のお着物を、お嬢様にお譲りするお手伝いをさせて頂くこともありますが、素晴らしい品々が揃えておありだと、呉服屋としても嬉しくなりますし、お母様、お嬢様もどこか誇らしげです。良い品物は時代を経ても伝わる価値があります。
まとめ
以上、訪問着や付け下げが初めてという方にも、一通り抑えておいて頂きたいことを述べました。
2.ご年齢、4.家紋、7.ご寸法、8.ガード加工、9.必要なアイテムについては、ご方針を一度決めればそんなに迷うこともありませんが、1.TPO、3.帯合わせ、5.季節についてはご自身でマスターされるには、それなりに着物をよく着て頂いても3~5年と掛かることでしょう。
またそれでもその都度、分からないことが出て来て誰かに相談したくなるぐらい、難しい課題です。
そんな時、周囲に頼れるご家族やご友人、懇意の呉服屋がいらしたら何よりですし、もし二十八があなたのライフタイム パートナーとしてお役に立てるようでしたら嬉しい限りです。
京ごふく二十八代表。2014年、職人の後継者を作るべく京都で悉皆呉服店として起業。最高の職人たちとオーダーメイドの着物を作っている。
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